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中学編~第三話

かけた覚えのないアラームの音で目が覚める。思考のはっきりしない頭で発信源を探すと、ベッド脇に設置してある据え置きのカウンターに内蔵してある時計からだった。そういえば、巽に昨日起きる時間を聞かれた気がする。アラームを消して、巽の姿を探したけれどどこにもいなかった。既に会社に行ったのだろうか? 連絡先も交換していない。同性同士の付き合いは割り切ってする人が多いと、雅やんに言われたけれど巽とこれっきりというのも少し寂しくも思う。 着替えを済ませ部屋を出ようとして、テーブルの上に巽が頼んでおいてくれたのか、朝食のケータリングと、『昨夜は楽しませてもらったよ。君とは長い付き合いをしていきたいと思う。またいつでも連絡してきてほしい。』というメモとともに、巽の連絡先が書かれていた。 お互い年が離れすぎているから、付き合うだとかそういうことは言えないし、言うつもりもないけれど、感じたことはどうやら同じだったようだ、となんとなく感じ取る。少し冷めた朝食を取って、一度家に戻るとこれから寝ようとしている雅やんと出くわす。 「おはよーさん。お前昨日どこ行ってたんだ?友達んとこか?」 眠たそうに欠伸を噛み殺している雅やんに、昨夜のことをそのまま話す。 「はあぁっ!?おっま…っ……大丈夫だったのか!?」 「…?なにが…?特に何もなかったよ。よくしてもらったし。あ、俺あの店では高校生で通すから雅やん、よろしくね」 完全に雅やんはほうけている。変な趣味趣向のやつも多い中、運が良かったのは間違いないだろう。雅やんは頭を抱えていたが、諦めたのか特大の溜息とともに了承してくれた。そして、さっさと学校へ行けと急かされる。

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