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中学編~第三話

時間を見ると、遅刻ぎりぎりの時間で慌てて家を出る。流石に転入二日目で遅刻はしたくない。なんとかぎりぎりで遅刻を免れて、席に着く。授業は思ったとおり、英国にいたころ教えてもらった内容ばかりで、正直退屈だった。 現代文などは、もちろんやっては来なかったけれど書物は和洋問わず、読まされていたから特に問題はなかった。 問題は英語だった。 英国英語と米国英語、一応両方教えてもらっていたからそこは問題なかった。ただ、英語の担任が一生懸命なのはわかるのだが、噂には聞いていた日本語英語というかカタカナ英語で、ヒアリングでは何を言ってるのかほとんど聞き取れない。 「…これは……」 渡されたプリントもお世辞にも字が綺麗とは言い難く、本場の英語を聞いて育った葵からすれば苦痛以外の何物でもなくなってしまう。仕方なく、英語の時間は机に突っ伏すか、教師の言葉を極力耳に入れないように、違うことを考えるか、周りの子にプリントに書いてある意味を解読してもらい、提出物の点数稼ぎに徹していた。 次の時間は体育。このあたりも向こうの学校では、同い年で身長が180cm超えの子たちも大勢いたから、それと比べてしまえば球技系は大したことない。柔道や剣道といった競技はオリンピックやTVなどで目にする機会はあったけれど、実際にやるのは初めてだった。 基礎を覚えるのには苦労したが、基礎さえ覚えてしまえばあとは思いの外簡単だった。昔から要領は悪い方ではなかったから、コツさえ分かってしまえばなんとなく出来てしまう。  これが葵がモテる要因の一つだということに、もちろん葵本人は気付いているわけもなかった。 何度目かの剣道の授業を終えてからというもの、クラスの剣道部からしつこく勧誘に誘われ、あまりにもしつこかったため入部することにした。 しかし、元々本意ではなかったため普段の練習にはほとんど顔を出さなかった。試合があるという前だけ、参加して試合の補欠要員として試合に行く。

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