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中学編~第四話
「普段ここは昼間あまり使わないのよ。月に数回、私の気まぐれでお昼の時間帯も解放するの」
いつのまにかノブママが立っていた。注文を聞きに来たのだろう。慌ててメニューを開いて決めようとすると、『バイトの子たちに上は任せてあるから、ゆっくり決めていいわよ』と笑われてしまった。
お言葉に甘えて、二人でじっくりメニューを見る。ハンバーグやパスタにオムライス、パンケーキといった定番から和食まで、カフェというには多すぎるくらいのメニューが揃っていた。
散々迷った挙句、二人ともノブママに勧められたハンバーグとパンケーキを頼む。『葵ちゃんは男の子なんだから、800gくらい余裕よね?』と言われて、危うく巨大ハンバーグが出てくるところだったが、なんとか言い訳して300gにしてもらう。普通のハンバーグが150gくらいだというのに、800gとなると相当の大きさだ。育ち盛りとはいえ、その大きさを考えただけで胸焼けがする。
一方しおりは、ノブママおすすめのフルーツとクリームたっぷりのパンケーキを頼んでいた。料理が運ばれて来る間しおりが、この街のことや自分のことを話してくれる。
「7月の半ばと下旬に花火大会とお祭りがあるんだけどね……それ、葵と行きたいなぁーって、思って」
どちらも日本の風物詩だ。幼い頃から旅行感覚で日本には帰ってきていたけど、夏祭りや花火大会なんかの行事は行ったことがなかった。
「いいよ、行こうか。夏祭りといえばやっぱり浴衣なの?日本って。俺、浴衣って着たことなくてさ。しおりが浴衣着てくれるなら俺も浴衣着てみようかなって…」
その後運ばれてきた料理は、とても美味しくてノブママに素直にそう言ったら、デザートをサービスしてくれた。繁華街の近くにある割には静かで、ゆっくり過ごせるそんな場所だ。それからはその日は、しおりの希望で映画を見に行った。なんでも今流行りの〝携帯小説〟を原作にした恋愛映画だ。
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