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中学編~第六話

相手の攻撃をわざとギリギリで交わしながら、おどけた風に言う。今まで優勢に立っていたのに、葵の口調で相手選手に焦りが見え始める。葵が一歩踏み込む。それで形勢が逆転する。葵を追い詰めたと思っていたが、逆に追い詰められていたのは自分の方だと気付いた頃にはもう遅い。葵が最後の一刀を打ち込んで、土壇場の逆転勝ち。会場から大きな拍手が上がる。 試合が終わり『今日は打ち上げだ』なんだと、はしゃいでいる葵たちの横を通り過ぎる一組の学校。それに気付いた監督が説明してくれる。 「今のは…隣県の名門で、エースが今年二年の朝霧秋葉。去年の優勝校さ」 「へぇ…」 せっかくだから試合を見ていけと言われ、仕方なく見学していく。 「朝霧は昔から剣道一筋らしくてな、動きが綺麗だのなんだで、女子に人気らしいぞ。お前も見習え、藤堂」 「……え、俺もわりと女子に人気ですよ」 「そっちじゃない、馬鹿野郎」 先発から試合に出てきた朝霧は、確かに素人の葵にも分かるほど動きが洗練されていて無駄がない。そのまま朝霧は、そこそこの相手に一人勝ちしてしまう。 一礼して、面を外す。大歓声の中、会場を見渡していた朝霧と視線が合ったような気がした。 「…気のせいだよな?」 朝霧の試合を見終えて、ようやく会場を後にする。 打ち上げに誘われたが、流石に少し疲れたので断った。これで三年生への切符は繋いだ。家に着いて即ベッドにダイブする。彼女からメールが来ていたが、返す気力もない。 「…朝霧秋葉ね……」 襲い来る眠気に身を任せ、夢の中へと沈んでいく。

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