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中学編~第八話

葵が出るのは、クラスリレーと綱引きと騎馬戦だ。他にも、色別対抗リレーやらなんやらに出て欲しいと言われたが、全部断った。もともと団体戦はあまり好きではない。同年代の子たちと比べて、自分が少々ひねくれていることは自覚している。 「けど、帰りたいもんは帰りたい」 クラスリレーのバトンを待ちながら、思わず口に出る。葵の願い虚しく、体育祭は始まったばかり。そして、葵のやる気のなさと反比例して任されるのはアンカーなどの重役。 「責任重大じゃねーか…」 現在の順位は4位くらい。すぐとなりで1位のクラスのアンカーバトンが繋がれる。続いて2位3位と続き、数秒差で葵の手にバトンが渡る。アンカーより前の選手は校庭半周の距離だが、アンカーだけ校庭一周走らなければならない。1位の子は半周走り終えたころだ。 『やらないときはとことんやらない。やるときはなにがなんでもやる』それが葵のモットーだ。 最近ちゃんと走ってはいなかったが、小学生の時から父親の秘境の旅に休暇中付き合わされていた、足腰を舐めてもらっては困る。野生の動物に追いかけられて死に物狂いで逃げた事も、一度や二度ではない。筋肉痛の残る足に鞭打って地を蹴る。 普段真面目に取組むことの少ない葵だが、本番にはとことん強い。故に、こうして重役を任される事が多いのだった。ぎりぎりで首位に躍り出て、そのままゴールする。このリレーが終わったらしばらく出番はない。急に走ったから足が痙攣している。放っておけば治るのだが、炎天下が嫌で屋根の下にある救護所で足を冷やすふりしてしばらく居座る。昼時の休憩まで休ませてもらえないかと思ったら、早々に席に戻されてしまう。

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