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〜余話~

季節も秋半ばを迎え、日本全国で紅葉が見頃を迎えた頃、葵たちの学校では合唱コンクールと保護者主催のバザーメインの文化祭が行われた。合唱コンクールの結果は学年金賞。 担任教師が音楽の教師だったということも、優勝出来た理由の一つかもしれない。 合唱コンクールが終わった後、茜とはお互い笑顔で別れた。次の日目を腫らしていたから、やっぱり泣かせてしまったのだと思う。罪悪感がないといえば嘘になるけれど、愛情がないのにずっと付き合い続けるのも、付き合い続けて他の子に告白されるのも鬱陶しい。現に茜と別れたあとすぐ告白され、また違う子と付き合っている。 巽との関係も今だに続いていた。巽には本当のことを話せていない。巽と身体を重ねる度、巽が将来の夢を語る度、葵の中に重いものがのしかかる。 少し前、巽に将来の夢を聞かれたことがあった。特に思い浮かばなかったから、何も答えずにいたら巽は自分の夢を話してくれたのだ。 『俺はこのまま今の職場で終わる気はないよ』 『どうして?俺には難しいことよく分からないけど、20代で会社の重役なんてそうそうなれるものじゃないでしょ?』 『確かにね。でもだからこそかな。自分がどこまでいけるのか試してみたい。俺はね、いつか自分の会社を持ちたいと思ってるんだ。そのためには、とりあえず今の会社でトップになってやろうって考えていてね』 会社を立ち上げたその時には、葵に自分の側近として一緒に仕事をして欲しいという話だった。 『いつになるかわからないし、準備が出来ているわけでもないから、考えておいてくれるだけでいいんだけど』

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