27 / 58

中学編~第九話

「……随分と楽しそうに会話をしていたけれど、何の話をしてたのか聞いてもいいかな?」 「ああ……今度こいつの学校が校外学習で2拍3日のスキー体験に行くらしんですけど、行きたくないって駄々こねてて……」 「別に駄々はこねてねーよ。強制されるのが嫌なだけで」 葵は少しむくれてみせる。 「大体来年はクラス替えあるってーのに、親睦もなにもあったもんじゃないと思うんだよね」 「ははっ…。君の意見はいつも大人顔負けに手厳しいな。じゃあ、その校外学習にもう一つ意味を加えてみたらいいんじゃないかな」 「意味……?」 「そう。君は今写真を撮ることに熱中しているんだろう?雪景色なんて都内じゃそうそう拝めないと思うけど」 「…っあ!」 確かに巽のいう通りだ。街中に撮るものが溢れているから、そこまで気が回らなかった。 ◆◇◆ というわけで、校外学習当日。 スキー場に着くと旅館に荷物を置いて早速、事前に決めた能力別の班に分かれてスキー学習だった。今の彼女とは班が別だから、この校外学習中会うことはないかもしれない。 一班に一人のインストラクターが着く。 葵たちの班は少し若めのお兄さん。なんでも都内からこの期間だけ、インストラクターのコーチとして来ているらしい。 「……ほんとこういうのいやだ。寒い。帰りたい」 「藤堂の『帰りたい』はいつものことだろ」 担任に嘆いてみたけれど、取り合ってくれない。暑いのは我慢できるけど、寒いのは苦手だ。 みんなでお揃いの上下を着て、ゼッケン付けて。しかもそのウェアが、全員お揃いの上下真っ黄色。蛍光色の真っ黄色。

ともだちにシェアしよう!