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中学編~第九話

「やるせない…この色は解せぬ」 「葵、たまにへんな言葉使うよなー。それなに、方言とか?」 「……多分武士語。昔父さんが使ってた」 「お前の父さん武士なの…?」 「でもまあさ、この色はねえよなー…もっとこう…他の色なかったんかね?とは思うよな」 本当は初日からサボるつもりでいたのだが、学校でわりとよく喋る男子に見つかってしまい仕方なくここにいる。けれどインストラクターのお兄さんが思いの外タイプだったので、まあいいかと思う。 そしてそのお兄さんは、恐らくこっち側の人間なのだと思う。〝同胞の勘〟ってやつかもしれない。案の定、初日の講習が終わった後に声をかけられ夜の自由時間にこっそり部屋を抜け出して、彼の部屋へ行った。 「へえ……本当に来てくれるとは思わなかったなー」 「来たくもない校外学習来てんだから、このくらい遊んだっていいかなってさ」 「3日間とは言え、自分のインストラクターにそれを言っちゃうんだ……。藤堂くん…だっけ?君相当やり慣れてるでしょ?」 本当のことだから否定もしない。 「まあね。俺の知り合いがバーやっててさ、そこのお客さんとね。お兄さんも今度遊びに来てよ。あ、でも俺店では高校生ってことになってるからよろしくね」 事を終えシャワーを浴びて、見つからぬように部屋に戻る。相部屋のやつらに何処に行ってたかしつこく聞かれたが、『星が綺麗だったから眺めてた』と適当なことを言ったら納得してもらえた。 学校では〝不思議なやつ〟とか〝変わり者〟とかで通ってるらしいから、なんの疑問も持たれなかったのだろう。ありがたいことだ。 その日の夜、就寝時刻はとっくに過ぎているが、普段の葵ならまだ誰かのベッドにすらいない時間帯だ。部屋割りは4人1部屋。他の3人も寝る気はなさそうだ。そしてこの3人は、葵が女の子をひっかえ取っ替えするのを貶すでもなく、面白がっている。よく言えば良き理解者だ。

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