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中学編~第十話
春体も無事終わり、迎えた春休み。健全な中学生らしく、友達と遊んで過ごす。何度か巽から連絡があったが、断ってしまった。廣瀬とは、あれから連絡を取っていない。関わりたくもない。
二年になり、行われていたのはクラス替え。そういえばそうだったな、と思い出す。
「担任…変な奴じゃなきゃいいな」
「新しい教師も何人か来てたぞ。新聞に載ってた」
幸い、葵のつるんでいた数人は同じクラスだったので、一緒に教室へ向かう。
そして始業式で、担任教師が発表された。三年はクラス替えがないので、ここで発表された教師が継続となることが殆どだった。
運命の分かれ道ともいえる瞬間――。
「二年一組の担任は、○○中学から新しく赴任してきた、橋本光枝先生です。担任教科は英語となります」
「……最悪だ」
一番当たりたくないと思っていた人物だった。
どんな英語を話すか知らないが、英語を母国語のように話す葵にとっては色々な意味で先が思いやられるし、最初の自己紹介の時の雰囲気がとても好きになれなかった。所謂〝生理的に受け付けない〟というアレだ。
教室に戻り、改めて橋本に目を向ける。
病気なのか癖なのかわからないが、周りを常に薄目で見て、人のことを指差しながら話す。そして、言葉の最後に必ず鼻で笑う。
「……」
やっぱり好きになれない。常に人を、小馬鹿にしているような態度。大人だとか、教師だとか関係なく、不愉快だ。
人のことを薄目で見るのは、瞼が下がってきてしまう『眼(がん)瞼(けん)下垂(かすい)』という病気かもしれない。前に本で読んだことがある。先天性と後天性があるが、いずれにせよ瞼の筋肉が弱くなって、下がってきてしまう病気だ。
だから、それは仕方がないことだろう。だが、他は本人の癖だろう。
「……学校来なくていいかな」
「……なに、どうしたの葵」
隣の席になった茜が、心配そうに覗き込んでくる。
「…あの人…俺無理かもしれない…」
「あー……。頑張れ〜」
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