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中学編~第十話
何かを察したように、茜が苦笑する。こういう時、短くても元カノというのは察しがよくて助かる。
続いて、行われた自己紹介。ここで葵は、あることを話そうと決めていた。ちなみに、同じクラスになった葵の友達数人にはすでに話してあった。
「……初めましてな人も、そうじゃない人も改めて…藤堂葵です」
身長やら趣味やらを話していく。
「最近の趣味は、写真撮ることですね。風景専門です、俺は」
「あとは、中学上がる前は色んな国を転々としてました。日本語じゃ発音出来ないような、秘境みたいなとこにもいましたね。そのおかげで、日本語と英語の他に5ヶ国語話せます。海外行く時は、俺もぜひ連れてって♡」
「…得意科目は国語以外は、まあ出来ます。けど英語は、母国語みたいなもんなので日本の中学くらいの英語は、あまり好きじゃないです」
そう言った瞬間、橋本と目が合う。まさに一色触発。
『英語話せるんだっけ』と教師に話を振られるのも、カタカナ英語を聞かせられるのも、うんざりだ。
「…それと……、後々噂になってもあれなので、みなさんにお話しておきたいことが一つ」
「俺はバイセクシャルです。日本語では、両性愛者。定義は人それぞれだけど、要は異性同性関係なく、恋愛対象であるということです」
「とはいっても、基本的に一般的普通の恋愛とされがちな男女の恋愛、つまり異性愛者となんら変わらないんですけど」
「好きになったのが、男か女か、そんなのは大した差異じゃないし」
『俺を軽蔑するなら、すればいい』と言葉を付け足す。これで少しは告白される回数が減るだろうか、などという安易な意図だ。
橋本は、なんとなく自分を軽蔑しているような気がする。自己紹介が終わって、席に着く。
「…びっくりしたぁ〜。葵、今の話本当?」
「嘘ついてどーすんの」
茜や他の子たちに、好奇な目で見られる。
「…なあ、藤堂まじかよ……」
「…やっべ…藤堂に近寄んねえ方がいいんじゃね」
一部から冷たい声を浴びせられる。覚悟の上ではあったが。
「……お前らは、そこらへんにいる女にほいほい手出すのか?出さねえだろ。お前らが、俺に食われてえってんなら話は変わってくるが、そうじゃねえなら俺たちはお前らと変わんねえよ。
そもそも、誰がお前らなんか相手にすっか、ばーか」
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