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中学編~第十話

またたく間に噂は広がり、予想通り告白される回数が圧倒的に減った。特にいじめられることもなく、平和な日常だ。問題は、橋本の英語の授業。 一年の時のような、カタカナ英語ではないものの、聞いてられないことに違いはない。理由はもちろん、生理的に受け付けないからだ。 しかも、葵を目の敵にしているらしく事あるごとに、指名してくる。葵も葵で、指名されれば完璧に答えてみせるし、課題もやっては来るが、それ以外は机に突っ伏しているから、仕方ないかもしれないが。 それのせいなのか、学期末にもらった成績表の成果があまりにも酷く、思わず校長に抗議しに行き、評価を訂正させたほどだ。これだから、執念深い女は。 とにかくそんな感じで、毎日が憂鬱だ。 イラスト付で自己紹介の用紙書けだのと、毎朝順番に、朝のスピーチだの、英語の授業の前に古い洋楽歌えだのと。 転入してきた時を、思い出す。幸い朝のスピーチは、秘境巡りのことや、店のことなど、話す内容には困らないが、面倒くさい。他の科目は、多少担当教師に変更はあったものの去年と変わりない。 放課後は店への出禁が解禁されたので、店にいることが多くなった。店を手伝うこともしばしばで、たまに気に入ったお客さんと遊ぶ。だがあの一件以来、遊ぶ相手は慎重に選ぶようになった。 巽とも連絡を取り合うことが多くなったが、巽が昇級したとかで忙しく今まで以上に、会うことが減ってしまい、少しばかりさみしく思う。巽には、廣瀬とのことも話してあった。それのせいで、距離を置かれてしまっているのかもしれない。 夏休みには、雅やんの店を手伝って稼いだお金で、一人ぷらりと海外旅行へ行った。 好きな写真を撮って、好きな時に気の向くまま歩く。昔一度だけ、家族で住んだことがあったが、すぐに違う場所へ越してしまったのだ。 日本に戻ってきてからは、友達とプールへ行ったり、部活の練習に明け暮れたり。本当に、日本の夏休みは短いと思う。夏休み中に、念願だったピアスを開け、左腕の上部から太もも当たりまで、身体のラインに沿うように刺青を入れた。あまりの痛さに、思わず何度か死にそうになったが、出来上がった時は一日中眺めていたものだ。 どちらも、もちろん学校では禁止されているので、常にTシャツを着なければいけないし、ピアスは『宗教上の理由』と言って押し通した。 ――やらなければいい? やりたいと思ってしまったのだから、仕方ない。 それに刺青なんかは、お客さんに評判がいいのだ。夏休みが終わりしばらく経つと、修学旅行の時期。場所は京都と奈良。

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