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中学編~第十話
さすがに刺青を見られるのはマズイ、うん。ロビーで一息吐く。
「……あれ?もしかして、葵か…」
ふと、声をかけられる。びっくりして振り向くと、そこには巽の姿。久々に見た気がする。
「…巽さん?……どうしてここに?」
メールで、関西の方へ出張だとは聞いていたけれど、まさかこんな所で会うとは。
「俺は出張中。葵こそ、どうして?」
「俺は…修学旅行だよ。まさか、同じ旅館だとは思わなかった…」
「急な出張だったからね、どこも空きがなくて」
そういって苦笑する。久しぶりに見た巽は、少し疲れて見えた。
「巽さん…少し疲れた顔してる」
「…葵には分かっちゃうか……少しね。でも、心配いらないよ。それより……」
巽の大きな腕に抱きとめられる。
「……っ」
「……辛い時、側にいてやれなくて悪かった」
「……巽、さん…」
失望されたかと思っていた。抱きしめられて、思わず泣きそうになってしまう。
「…ううん、大丈夫。ありがとう…」
それから少し話しをし、去り際にキスをして巽と別れる。明日も早いのだそうだ。一人になって、時間を見ると22時30分を回っていた。
「こんな所で何をしていたの?」
振り向かずとも分かる、声の主。
「…お風呂に行こうとしていたんですよ、橋本先生」
「…23時からではなかったですか?」
「…散歩がてらの、暇つぶしです」
「…さっきの男性は誰ですか」
「覗き見とは、悪趣味ですね」
どうしてこうも、突っかかって来るのか。
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