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中学編~第十話
となれば、やることは一つ。
店での一件も落ち着いた頃、ふらりと店へ行く。誰かいないだろうか、と思ったが生憎ノブママと、雅やんしかいない。久しぶりに寂しい夜を迎える羽目になりそうだ。
その日の閉店後、ふと気になっていたことを雅やんに問う。
「…雅やんって、ネコになった事あんの?」
「…はぁ!?なんだ、いきなり…」
「…いや俺さ、ネコは経験あるけどタチはないなって今気付いて。ねぇ、雅やん…」
「断る…っ!」
言葉を続けようとして雅やんに遮られてしまう。
「まだなにも言ってない」
「どうせ『抱かせろ』とかいうんだろ!?」
「さすが、雅やん。一回だけでいいからお願い!」
「…オレはタチなんだよ!大昔に一回まわったことあっけど、それっきりだ。いくら頼まれても、それはヤらねぇぞ!」
頑なに断られてしまう。
だが、こちらとしても引くわけにはいかないのだ。流石に見ず知らずの相手でタチを試す気にはなれない。しつこく毎日頼んだら、ようやく折れてくれた。
「いいか、一回だけだからな?オレだってほぼ初めてみてーなもんだからな。お前がしつけぇから、相手してやるだけで次はねぇからな?」
「分かってるよ…」
というわけで、その日の夜。
「……ねぇ…雅やん?……痛くない、平気?」
自分より一回り大人な雅やんが自分に組み敷かれ、不服そうにしながらも息を荒げている姿は、不覚にも愛しくてたまらない。そのままいつも自分がされているように、朝まで雅やんと身体を重ねる。
「……二度とやらん……」
雅やんと朝を迎え、学校帰りに店に行くとしかめっ面の雅やんがいた。今日も客足はそこそこだ。
「…雅やん…まだ根に持ってんの?」
「あたりめーだろ。どっかの誰かさんが盛るから、腰が痛くてかなわねぇ」
「えー…俺だけのせい!?」
「雅やんも、満更でもない感じだったような気がする…」
とぼやいたら、小突かれた。痛い。
ノブママには、『貴方はタチ気質よね~。ネコと見せかけてのタチよ!』と断言されてしまう。
自分でも、そんな気はしていたのだ。いつか自分と年の近いやつとヤる時は、タチに回ろうと一人心に決める。
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