46 / 58

中学編~第十話

となれば、やることは一つ。 店での一件も落ち着いた頃、ふらりと店へ行く。誰かいないだろうか、と思ったが生憎ノブママと、雅やんしかいない。久しぶりに寂しい夜を迎える羽目になりそうだ。 その日の閉店後、ふと気になっていたことを雅やんに問う。 「…雅やんって、ネコになった事あんの?」 「…はぁ!?なんだ、いきなり…」 「…いや俺さ、ネコは経験あるけどタチはないなって今気付いて。ねぇ、雅やん…」 「断る…っ!」 言葉を続けようとして雅やんに遮られてしまう。 「まだなにも言ってない」 「どうせ『抱かせろ』とかいうんだろ!?」 「さすが、雅やん。一回だけでいいからお願い!」 「…オレはタチなんだよ!大昔に一回まわったことあっけど、それっきりだ。いくら頼まれても、それはヤらねぇぞ!」 頑なに断られてしまう。 だが、こちらとしても引くわけにはいかないのだ。流石に見ず知らずの相手でタチを試す気にはなれない。しつこく毎日頼んだら、ようやく折れてくれた。 「いいか、一回だけだからな?オレだってほぼ初めてみてーなもんだからな。お前がしつけぇから、相手してやるだけで次はねぇからな?」 「分かってるよ…」 というわけで、その日の夜。 「……ねぇ…雅やん?……痛くない、平気?」 自分より一回り大人な雅やんが自分に組み敷かれ、不服そうにしながらも息を荒げている姿は、不覚にも愛しくてたまらない。そのままいつも自分がされているように、朝まで雅やんと身体を重ねる。 「……二度とやらん……」 雅やんと朝を迎え、学校帰りに店に行くとしかめっ面の雅やんがいた。今日も客足はそこそこだ。 「…雅やん…まだ根に持ってんの?」 「あたりめーだろ。どっかの誰かさんが盛るから、腰が痛くてかなわねぇ」 「えー…俺だけのせい!?」 「雅やんも、満更でもない感じだったような気がする…」 とぼやいたら、小突かれた。痛い。 ノブママには、『貴方はタチ気質よね~。ネコと見せかけてのタチよ!』と断言されてしまう。 自分でも、そんな気はしていたのだ。いつか自分と年の近いやつとヤる時は、タチに回ろうと一人心に決める。

ともだちにシェアしよう!