49 / 58

高校編~第一話

入学式から数日。休み時間に廊下を歩いていると、不意に声をかけられる。 「…なあ、あんたが藤堂葵?」 「……そーだけど、あんた誰?」 名乗りもしないとは、なんと失礼な。 「オレは隣のクラスの五十嵐ってんだ…、五十嵐礼央。以後お見知り置きを」 「…ふーん…、で?」 「…クールだこと…。まあいいけどさ。あんた、バイなんだってな。オレ、完璧にそっち側なんだけどさ、相手いなくて困ってんの。助けてくれない?」 おどけた様子で、五十嵐はいう。 「…冷やかしなら帰れよ」 あまりにもふざけた口調なので、嘘くさいと追い返そうとして背を向けると、慌てたような声が追いかけてくる。 「……っ…、悪かったって!待てよ、藤堂……。話はマジなんだって…!」 今度はあまりにも必死そうなので、仕方なく二人でトイレの個室へ向かう。 「…お前、タチネコどっちなの?」 出来れば、ネコは遠慮したい。 「…多分タチだけど、藤堂にだったら掘られてもいーよ」 「あっそ……、じゃー遠慮なく」 ◆◇◆ 事を終え狭いトイレの中で後処理をしながら、五十嵐にぼやく。 「次からは、ヤるならもっと広いとこがいーんだけど」 「それはオレも同感…」 五十嵐が呻くように賛同する。 「…で?初めてネコになった感想は?」 行為中の五十嵐の様子を思い出して、からかうように問う。 「…今、腰がものすごく重いけど、シてる時は悪くなかった…。お前、どんだけやり手なの。オレと同い年で、アレとか色々通り越して怖いんだけど」 「…お褒めに預かり光栄ですってな。俺、リバだからさ。どっちのいーとこも分かっちゃうの。気が向いたら、また遊んでやるよ」 手をヒラヒラと振りながら、トイレを出る。 「授業サボっちまったじゃねーか……」 リバだからというより、単純に経験の差のような気もする。葵と同い年で、葵と同じだけの経験をしてる子はそうそういないと思うのだ。

ともだちにシェアしよう!