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高校編~第一話
入学式から数日。休み時間に廊下を歩いていると、不意に声をかけられる。
「…なあ、あんたが藤堂葵?」
「……そーだけど、あんた誰?」
名乗りもしないとは、なんと失礼な。
「オレは隣のクラスの五十嵐ってんだ…、五十嵐礼央。以後お見知り置きを」
「…ふーん…、で?」
「…クールだこと…。まあいいけどさ。あんた、バイなんだってな。オレ、完璧にそっち側なんだけどさ、相手いなくて困ってんの。助けてくれない?」
おどけた様子で、五十嵐はいう。
「…冷やかしなら帰れよ」
あまりにもふざけた口調なので、嘘くさいと追い返そうとして背を向けると、慌てたような声が追いかけてくる。
「……っ…、悪かったって!待てよ、藤堂……。話はマジなんだって…!」
今度はあまりにも必死そうなので、仕方なく二人でトイレの個室へ向かう。
「…お前、タチネコどっちなの?」
出来れば、ネコは遠慮したい。
「…多分タチだけど、藤堂にだったら掘られてもいーよ」
「あっそ……、じゃー遠慮なく」
◆◇◆
事を終え狭いトイレの中で後処理をしながら、五十嵐にぼやく。
「次からは、ヤるならもっと広いとこがいーんだけど」
「それはオレも同感…」
五十嵐が呻くように賛同する。
「…で?初めてネコになった感想は?」
行為中の五十嵐の様子を思い出して、からかうように問う。
「…今、腰がものすごく重いけど、シてる時は悪くなかった…。お前、どんだけやり手なの。オレと同い年で、アレとか色々通り越して怖いんだけど」
「…お褒めに預かり光栄ですってな。俺、リバだからさ。どっちのいーとこも分かっちゃうの。気が向いたら、また遊んでやるよ」
手をヒラヒラと振りながら、トイレを出る。
「授業サボっちまったじゃねーか……」
リバだからというより、単純に経験の差のような気もする。葵と同い年で、葵と同じだけの経験をしてる子はそうそういないと思うのだ。
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