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高校編~第二話

 大抵の大人や部外者は、自分たちのような〝セクシャルマイノリティ〟に出会うと、汚い物を見るような目で見てくる。世間に理解されるようになってきたとはいえ、まだまだ偏見の目が多いのは事実だ。それにああいう行為が学校でやるべきものではないということも、一応分かってはいる。やめる気は毛頭ないが。 「…それをやったら、俺は恐喝罪で逮捕だな。そんなのはごめんだ」 「じゃあ何の用なんです?教師に報告もしない、俺を脅すわけでもないんなら…ッ!」 「何故、部活に来ない?」 「は…?」  閉まりかけた口がもう一度開いて塞がらない。わざわざ昼休みに3Fにある3年の教室から1Fの1年の教室まで来て、わざわざ教室から離れた空き教室まで自分を連れてきて何かと思えば用件は『なぜ部活に来ないのか』それだけだというのか。警戒していた自分が馬鹿らしい。 「剣道部に入ったんだろ、お前」 「……まあこの学校、部活強制だったんで仕方なく…」  完全に毒気が抜かれた様子で葵は溜息を吐く。 「知ってて入部したんじゃないのか?」 「…は?剣道部が強いってですか、それともアンタがいるってことですか。どっちも知らなかったですよ。俺ここの学校、家から近かったから選んだだけなんで」 (そういえば中学の時、ここの高校に決めたと橋本に言ったら途端にとやかく言われなくなったっけ。そういうことだったのか……)  当時は『とやかく言われなくなってラッキー』なんて思ったものだ。 「そうか……」  少し間をおいて、朝霧は残念そうに一言だけ呟くように言葉を漏らす。それはそれは、本当に残念そうに。 「……」 「それなら…「脅されても、俺は部活行きませんからね」」  思いついたように顔を上げた朝霧の言葉を、容赦なく遮る。 「大体、俺の他にも幽霊部員いっぱいいるでしょう」 「俺は、お前と戦いたいんだ」  迷うことなくそう言い切られてしまう。 「嫌ですよ。別に俺、剣道好きじゃないですし」  葵自身、朝霧とまた戦いたいと思ったことがないわけじゃない。けれど、それはあくまで過去の話だ。尚も何か言いたげな朝霧を残して、葵は教室を後にする。

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