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高校編~第二話
(……違うって分かってるけど……これは…)
まるで告白のようだと、葵は内心頭を抱える。しかも、多分いや絶対に狙って話しているわけではないのだろう。
「……じゃあさ、先輩。俺と取引してよ」
「…取引?」
朝霧が怪訝そうに首を傾げる。
「そう、取引。俺が部活に出る代わりに、アンタ…俺に抱かれてくれませんか」
「…なんだと!?」
「毎回、相手探すのも結構面倒なんですよね。それに先輩だって、よく分かんないけど俺以外と試合しても、満足出来ないんですよね?つまりそれって、フラストレーションが溜まってるってことですよね」
「…そ、そうなのか?」
「そうなのかって…、自分で分からないんですか?先輩って、童貞…」
「……」
葵の問いに、無言の朝霧。それはつまり、肯定の意なのだろう。
「俺は剣道一筋なんだ」
葵の口元に笑みが零れる。悪戯な好奇心が芽生えた。
「…っ!」
朝霧に一歩近付く。一進一退。葵は意図も簡単に朝霧を手近な机へと追いやると、まるで何でもない事かのように言う。
「安心してください、先輩。最初から挿れたりしないですから。それに俺、上手いんで大丈夫ですよ」
「…っそ、そういう心配をしてるわけじゃな…い」
「ねえ、先輩」
『部活出てほしいんでしょう?』そんな意を込めて、朝霧にそっと触れる。宣言通り、最後まではしない。ただ、触れるだけ。
朝霧は抵抗しない。断ることなど出来ない。と思っているのか、それとも恐怖か。葵にはどちらでも良いことだ。寧ろ抵抗されないのなら、そちらの方が都合がいい。
「じゃあまた、秋葉先輩。約束通り、部活は来週から出ますから安心してくださいね」
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