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第2話

 昨日まで犬だったロロは、主人であるロダンテの黒魔術により、長身で筋肉質な美青年の姿になっても、自己イメージが『可愛くてもふもふの犬』のままで更新されていないらしかった。ロダンテが朝、目覚めるとベッドの中にロロが、いた。  「おはよう、ご主人。そろそろ昼だぜ」  ロダンテにぴったり体を寄せて寝転ぶロロが、寝返りを打ってこちらを向き、八重歯を見せてにぱっと笑いかける。ロダンテは心臓が止まるほど驚愕したが、彼はプライドが高いため、動揺を悟られないよう、しかめっ面を造った。  「なぜ、私のベッドに入ってきているのだね君は。早く出なさい。君用のベッドを用意してあったはずだろう」  「ご主人にくっついてねーと、寝つけなくて」  ロロは悪びれた風もなく、えへっと笑った。ロロが犬だったころ、毎晩、ロダンテのベッドで一緒に眠っていたのだ。  「何を言っているのだね。今日からは昨日までのようにはいかないよ」  ロダンテが告げると、ロロは至極不満そうにした。  「え~? 今日からダメなんて、ご主人、一言も言わなかったじゃないか。ダメならダメでちゃんとゆってくれれば、オレはご主人のゆうことならなんでも聞くのに」  しゅんと眉尻を下げるロロ。人の姿になった今はもうない尻尾も、しょんぼり下がるのが目に見えるようだ。  しかし、今はそんなことよりも……、  「き、き、き、き、き、君はなぜ一糸まとわぬ姿なんだ~~~!?」  ロダンテの声が部屋中に響き渡った。  「ご、ご主人のパジャマ、サイズがちっちゃくて胸元がきつきつで苦しくて寝れなかっ「本当に馬鹿だな君はァ!! 己の姿を鏡でよく見てきたまえ!!」  ロロの言い訳を遮って、ロダンテはさらなる金切り声を上げた。  ロダンテが風呂場のほうをびっと指さすと、素直で従順なロロは言われたとおり、風呂場へ向かった。しばらく、大真面目な顔つきで鏡に映る自身の顔や肉体を観察したが、ロダンテに怒鳴られるような問題点があるようには見えず、きょとんとしながら、ロダンテのいる寝室へ戻った。  「どうだ? 私の怒る意味がわかったかね?」  「ぜーんぜん、わかんなかったよ。ごめん、ご主人」  ロロはしょげた反応をした。  「うむ。正直なのはいいことだね」  「…だが、君は如何せん、馬鹿すぎる」    ロロの心の尻尾はロダンテの台詞の前半でひゅんと持ち上がり、後半で元気なく下がった。堅物のロダンテでさえ、面白いと感じるほどだった。  「もう一度、よく見てきたまえ。その間に私は君にサイズの合う服を魔法で錬成しておくから」  ロロはうん! うん! と頷いてから、再度、風呂場へ向かった。ロダンテは額に手を当て、俯く。  (…身も蓋もない表現だが…、今のロロは体つきが淫猥すぎる!!)  ロダンテは頭を抱えて悶絶した。先ほど、ベッドの中で全裸のロロに密着されていたときに感じたものたちの情報量の多さよ。  ロロの筋肉質な肉体の弾力、  愛らしい顔立ちのわりに存外と濃く茂った体毛、  脚に当たっていた大きめの尻の存在感…………。  思い出すだけで全身の血が一か所に集まり、沸騰するのを感じた。  (ええい! 収まりがつかん!!)  ロダンテはロロから逃れて一人きりになるべく、厠に引きこもって猛烈に自身を慰めはじめた。  劣情と情愛が迸る。却って収まりがつかなくなりそうで、手の動きを止められない。こんなに興奮するのは生まれて初めてかもしれなかった。  (ロロ、ロロ、私の愛しいロロっっ、君は私だけのもの……!!)  …しかし、ほどなくして、風呂場から戻ってきたロロが服が用意されてないことを訴えて、ご主人ご主人と厠の扉を叩くのだった…………。  

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