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第5話
***
翌日、仕事に来ると早河に「おい」と呼ばれる。
「何?」
「今日中尾と一緒に行動しろ」
「えぇ、中尾とぉ?無理無理、だって俺たちだけじゃ仕事にならないもん」
「わかってんなら自重しやがれ。」
「無理だってば!それが出来たらこんなこと言ってないよ!」
文句を言うと呆れたように溜め息を吐かれた。でももうそれは決定事項らしく、仕方なく中尾の運転する車の助手席に座ってボーッとする。
「どこに行くか知ってっか?」
「知らないよ。ちょっと疲れたから寝てていい?」
「だめだ!寝るな!俺も寝ちまうだろ!」
「それはやばい、起きてるから寝ないでよ」
「うぃー」
ふんふん鼻歌を歌う中尾。
結局目的地はどこで何しに行くのかは教えてくれないようだ。まあそれは楽しみに取っておこう。
携帯を無意味にパカパカと開閉する。
来るわけないけど燈人の連絡が気になって画面を見つめて落胆して。
「お前さっきからパカパカうるせえよ!」
「いいでしょ、暇なんだからぁ。」
「なら何か話せよ、俺も暇だ」
「えー?そうだなぁ、この話したっけ?」
別にどうもない話をした、特に笑える事もなければ悲しむ事も、怒る事もなかった。
そうして時間は過ぎて目的地に辿り着く。
「ここ?」
「そ。」
「···古い家だね」
ドンッと建ってる木造の家。古い家だけど、何だか見惚れる。ボーッと家を見てた俺を気にすることもなく中尾はドアを激しく叩きだす。それに驚いて慌てて中尾に駆け寄った。
「中尾ですけどー!!」
「ちょ、お前そのドアの叩き方やめなよ!うるさいよ!」
「は?どこが?うるさいってのはもっとこう···」
「やらなくていい!!やらなくていいから頼むから静かにして!?」
ドアを叩くのにそんなに力を込めるのか?と思えるほどの腕の振り幅をとった中尾を止めてると家の中からドタドタドタドタとこれまたうるさい足音が聞こえてきた。
「うるせえ!!ちょっとくらい静かにできねえのか!!」
「親父の使いできましたー」
「お前に言ってんだよ中尾。使いできましたじゃねえよ、まずは謝れよ」
家から出てきた親父に似てるその人は親父の弟の昴さんだった。訳あってひっそりここで1人で暮らしてるらしい。
そして昴さんはさすが親父の弟ってだけあって纏ってるものが何か違う。
前にも、ここではなく別の所で会ったことはあるけれど、その時はこの人が少し怖くてあまり話さなかったし。
「赤石は久しぶりだな、お前が中尾のお守りか?」
そう言われて苦笑すると中尾がムッとして昴さんに言い返す。
「はぁ?昴さん知ってます?赤石も相当うるさいですよ?」
「お前よりは断然マシだろ。···で、兄貴の使いだったよな。とりあえず上がれ」
「お邪魔しまーす」
「···失礼します」
何だろう、昴さんと中尾の慣れてる感じは。少し不思議に思いながら昴さんの家に上がらせてもらった。
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