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第6話
ここにいろって部屋に入れられて、何の遠慮もなしにドサッと寝転がった中尾をやめろと蹴る。
「なんだよ、いいじゃねえか。昴さんいねえし。」
「そういう事じゃないよ!!」
早くちゃんと座れってどんどんすればうっぜぇって言いながら俺を睨んだ。
「これこれ、これ兄貴に渡しとけ────···って中尾、お前いい度胸してんじゃねえか。」
「昴さん!すみません!」
「いや···はぁ。中尾のそういう面はもう諦めるわ。あ、これだけどよ、お前らは見るな。絶対に見ないでこれを兄貴に渡せ。」
「はい」
「ん。···なあ赤石。」
渡された紙を受け取って、頭を下げると名前を呼ばれ、顔をあげようと思えば髪をワシャワシャと撫でられる。
「俺に対してはそんなに畏まらなくていいんだぜ?」
「いえ、あの···」
「兄貴は確かにお前らにとっては絶対的存在だと思うが、俺はただのそいつの弟だ。···正直言うと中尾のあの態度は···たまに少しムカつくが俺はいいと思ってる。だからこそお前とは距離がありすぎる感じがしてな。」
「···················」
「無理にとか、すぐに、なんて事は言わねえから、少しくらい···な?」
そう言われてクスリと笑った。そうだ、昴さんは昴さんだもんな。仮に俺が昴さんの立場ならそう思うと···思うし。
「はい、もうちょっと、中尾みたいになります」
「なりすぎるなよ!あいつは行き過ぎだからな」
二人でクスクス笑うと中尾が「何悪口言ってんだ!」と俺を後ろから軽く蹴ってくる。それに「お前は何してんだ!」と昴さんが怒った。その様子が何だか面白くて俺はまた笑った。
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