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第11話
「最悪だよ、もう。」
自宅で一人ソファーに寝転んでため息を吐く、たった2回寝ただけだけど寂しい。
何であそこでイラってきちゃったのかな、何であんただけじゃないとか言っちゃったのかな。後悔しても遅い。
「···明日、仕事行きたくないなぁ」
って言っても行かなきゃならないんだけど。
ご飯も食べる気にならないし、もうこのまま朝まで眠っちゃえ。って思ってたのに
「はぁ!?今から!?」
「そうだ。俺も今から向かう」
「何時かわかってる?夜中、1時を回りました!!」
「いいから早くしろ、中尾が手つけらんねえって言うくらいだ、早くしねえと逃げられる」
深夜の繁華街、若い奴らが殴り合いの喧嘩をしてるらしい。ここら一帯を裏で見張ってる俺たち浅羽組はそういうのを止めないといけないわけで。
「わかったよ、場所送ってきて」
「ああ。なるべく早くな」
「わかってる」
電話を切ってポイッと携帯を投げた。着替えないと。髪だって直さなきゃ。ソファーから起き上がってため息を吐いてから立ち上がる。
「うわ、腰の違和感やばい···」
トントン腰を叩く、それから伸びをして服を着替えに部屋に入った。スーツに着替えて髪をセットしてささーっと家を出る。
「すぐ近くじゃん」
家を出て携帯を見れば指定されたのはすぐ近くだった。なるべく早くって言ってたし、走った方がいいな。滅多に走ることないんだけど。
中尾が手こずってるってそんなに強いやつなのかな?なら早河がなんとかしてくれないと浅羽組に傷が付いちゃうね、浅羽の組員はそんなに弱いのかって。
「赤石!」
「あ、早河」
「遅え!さっさと行くぞ!」
「頑張った方なんだけどなぁ」
俺にしては頑張ったんだけど、黒い感情がモヤモヤと顔を出す。誰も認めてはくれないんだからと怒りが湧いてくる。
たどり着いたそこでは中尾が声を荒げて男達の喧嘩を止めていた。こういう時なるべく手は出しちゃいけないんだと早河に言われてるけど、聞かないしいいでしょ。それに今はすごくモヤモヤしてる。
「赤石やめろ!!」
早河の制止の声を聞かないでそこにいたまた喧嘩をやる気の1人の男の肩を掴んだ。そのまま振り向かせて拳をそいつの顔にくれてやる。振り向いた時の勢いもあってかそいつはフラフラと後退して地面にケツをつける。
「おい、なんで赤石キレてんの?」
「知るかよ」
中尾と早河が後ろでコソコソと話している、そんなのも聞いてられない。
男達の目が、敵が、俺へと移る。俺に向かってくる奴らにニヤリと笑い拳をぐぐっと握った。
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