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第15話
「誰ですかこいつ」
「誰って、俺のダチ」
「···俺のことめっちゃ睨んでくるんですけどぉ」
「それはこいつの愛情表現だ」
若に連れられて来たのは廃工場。欲しいものあるって言ってなかったっけ?あれ嘘なの?それともここにあるの?
ここにはゾロゾロと所謂不良という奴らしかいない。そいつらは若が目に入ると頭を下げて挨拶をする、その中から若がナチという身長が低めの男を引っ張ってきた。
「こいつ、あんまり周りと馴染めなくてな、無理する必要はないと思ったんだがそうもいかなくてよ」
「ハルくん、俺はいいんだってば!!一人でもちゃんと戦えるし!!」
「ここでは俺が全部を決めるんだ。───ってことで赤石。こいつに強くなるためにはどうしたらいいのかってこと、教えてやってくんねえか?」
「···俺がぁ?」
「ああ、頼りにしてっぞ!」
「···もー!わかりました。───えっと、ナチくんだっけー?俺赤石真守ね」
よろしくってニコリ笑うとそいつはフンと鼻を鳴らし顔を背けた。イラっとしてそいつの頭を鷲掴みにし無理矢理こっちを向かせる。
「イデデデデッ!!!」
「俺はね、若に頼まれてるのさ。俺のいうことちゃんと聞けないなら椅子に縛り付けてやるけど、どうする?」
「···チッ、わかったよ!!」
まだまだ餓鬼、その癖にプライドは高いらしい、俺に力で負けたのが悔しいのか唇を噛んでる。
「はぁ。···あのさ、いいこと教えてあげるね?そうやって悔しいからって自分を傷つけてちゃあ、若の言ってる強さは手に入らないよ」
「はあ!?」
「若はナチくんが大切みたいだからね〜」
「···なんでわかんだよ、そんなこと」
「んー?だって君を1人にはしたくないみたいだし?例えどれだけ喧嘩が強いって言ってもね、10人に···それに、もしかしたら武器を持ってるかもしれない相手に、1人で勝てる自信なんてさすがにないでしょ。でもその時にもし1人じゃなくて他にも仲間がいたら勝てるかもしれない。だからまずはその仲間を作らないといけないじゃん?」
「···俺、バカだから何が言いたいのかあんまりわかんねえ」
「···俺も説明とか凄く下手だけどね、今のでわからないなんて相当バカだよ?」
「うるせえよ!!」
カッと顔が真っ赤になったナチくんは腕で顔を隠して俺と目線を合わせようとはしない。照れてるの?かっわいいなぁ。髪をガシガシ撫でてやろうと腕を伸ばしたら「何すんだ!」と脛を蹴られた。
「っ···、まずは礼儀を教えてあげるよ。こっち来やがれクソ餓鬼が」
口調がどうしても荒くなって、ナチくんの首根っこを掴み廃工場の端っこに引っ張っていく。
「静かに俺の話を聞きなね?じゃないとさっき言った通り、椅子に縛り付けるからね?」
「フンッ」
「そこは、はいって言うところでしょ?」
「早く始めろよ!」
可愛いなんて思ったのが間違いだった。こいつはくそ面倒臭いただの子供だ。
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