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第19話

エスカレーターに乗って上の階に上がる。上にいる若が急に俺を振り返った。 「なぁ赤石」 「はい?」 「知り合いでもいたのか?」 「え、何でですー?」 「なーんか、うん。勘?」 「ハルさんの勘は当てにならないですねー。」 「えー、マジかよ!」 嘘だけども。ヘラヘラ笑うと何笑ってんだ!とナチくんに顔を軽くペシリと叩かれた。 「あのねえナチくん。俺は一応君よりお兄さんなわけでね?」 「気持ち悪かったからな。」 「···そうか。うん。」 もういいや。ナチくんと絡むのをやめて溜息を吐いた。 何でだろうか、さっき燈人に会ったからだろうか、落ち着かない。心がフワフワしてるというか···うまく言えないけれど。 さっきの女の子もセフレの一人なのかな。美人な感じの子だったな〜俺も女だったらもっとわがまま言っても相手されてたのかなぁ。今度はナチくんのせいでなく、燈人と自分のことで溜息を吐く。 「おい赤石、転けるぞ」 「へ?···っわ!?」 「だから言っただろー、ちゃんと見とけよ」 エスカレーターを降りるところ、ちゃんと見てなくて転けそうになった。もっと早く行ってくれたらいいじゃん!!って思ったけど言わない、言いそうになったけど我慢。 「さーて、じゃあお前らに質問だ!」 「え。」 「何ー?」 エスカレーターを降りたところから少し歩いて若は腰に手を当てて言った。 「貰って嬉しいものはなーんだ」 少し沈黙の時間が流れる。 えっと··· 「···何でですか?」 「プレゼントであげるんだよ。」 「誰に?」 「誰でもいいだろ!質問には答えませーん。」 質問するくせに、俺たちの質問には答えないのか。まあいいや。 「貰ったら嬉しいものとか、人それぞれですからねぇ」 「俺は何でも嬉しいなー、ハルくんからもらえるんでしょ?羨ましいよ!!」 あんまりこれといったものは思いつかなくて答えにならない言葉を返すと、若はだよなぁ···って言いながらそこにしゃがみ込んだ。 「初めてなんだよぉ、人をめっちゃ喜ばしてやりてえとか思うの。」 「···恋してるんですか?彼女?」 「···彼女じゃねえけど」 「ハルさん!!俺聞いてないよ!!彼女いたとか聞いてない!!」 「だから彼女じゃねえって。ただ···好きなだけ。親父も知らねえよ」 親父が知らない若の秘密···ということはこれは誰にも言わないでいてほしいことみたいだ。 「すっげー、いいやつだからさ。···赤石にはまた話すよ。親父には秘密だぞ」 「わかってますよぉ」 若と俺、···それと、ついでにナチくんとの秘密事ができてなんだか嬉しかった。

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