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第30話

「おはよぉ」 声を張り上げて部屋に入ってきたトラを睨みつける。 「ちょっと静かにしなよ、若寝てるんだから」 「あら、赤石が見てたのね。···で?ハルはどんな感じ?」 「熱がある以外わかんない。起こそうか?」 「そうね、ちょっとだけ起こして」 どんな感じか聞きたいし。とニコニコしてるトラを無視して若に近付いてトントンと肩を叩く。 「若ぁ、トラ来ましたよ」 「···ん」 「どんな感じか聞きたいからって」 「トラ···?トラ、おはよう」 ボーッとしてる若、俺はちょっと離れて後はトラに任せる。 「おはよ〜、どう?頭痛いとか吐き気とか、ある?」 「···頭、痛い」 「そう、それにしてもすごい熱いわね。水分取ってる?」 「うん」 若とトラが話してると部屋のドアが開いて早河がこっちに来いと俺を手招きで呼んできた。 「何ー?」 部屋の外に出て早河にそう聞くと中の様子を確認した早河が俺に顔を向ける。 「後はトラに任せて、お前は自分の仕事しに行ってくれ。ありがとな」 「···んー、わかった」 笑ってそう言うとよし、じゃあいけ。と背中を叩かれて気合が入る。 「3時間で終わらせよう」 そう自分の中で目標を立てて幹部室に向かった。 「3時間で終わらせるんだから見とけ!って豪語してたのは誰だっけなぁ」 「ごめんって!!あれはノリでしょ?そんなこと俺が本当にできるわけないんだから許してよー!八田のこと好きだからー!!」 「そんなこと聞いてねえわ」 「好きだって言ってるんだからそれは聞いた方がいいよ。モテないのはそのせいだよきっと」 「うるせえ!!」 余計なこと言っちゃったみたい。頭叩かれてこれが全部終わるまで帰るんじゃねえぞって資料をまとめる仕事を渡されて白目をむきたくなった。 「ケチ!童貞!!」 「童貞じゃねえし」 「え、嘘。八田ちゃんにも彼女いたことがあるの?」 「彼女じゃねえし」 あっそ、まあ八田ちゃんのそういう話に興味はないからどうでもいいや。手を動かそう。 若大丈夫かなぁってちょっと心配になりながらも目の前のことに集中することにした。

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