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第32話

トラの言っていた通り、夜になって若の熱は上がっていった。寒いと言う若に厚めの布団を持ってきたり湯たんぽ作ってあげたり。 「あ、お前まだいたのか」 「うん」 組のキッチンで若におかゆを作ってると八田が来た。八田は普段ここで寝泊まりしてるから今から組員達と飯を食べるつもりなんだろう。 「誰に?」 「親父達には秘密にしてね。···若が熱出しててね」 「若が?大丈夫なのか?」 「うん、トラにも診てもらったしね」 それに俺も見てるしー!と笑うと「そうだな」って言われて驚いた。 「お前飯は?」 「俺は大丈夫だよー、適当に食べるから」 「そうか、わかった」 キッチンから出てった八田。ちょうどおかゆもできたし、お椀に移して若の部屋に向かった。 「若ー、おかゆ食べれます?」 「···食べる」 食べると頷いたからゆっくり若を起こしてベットヘッドに凭れさせた。 「熱いんで冷ましてから食べてくださいねぇ」 「んー」 「食べれるだけでいいですからね」 ゆっくり口におかゆを運んでいく若。まだ顔色は良くなくてこれ食べたらトラにもらった薬を飲んでもらわないと、とそれをベッド横の棚に用意した。 「それ食べたらこれ飲んでくださいね」 「おう」 「ちょっとは、ましになりましたー?」 「ああ、さっきより全然まし」 「よかった」 少しして若が全部食べ終わってお椀をもらう代わりに薬を渡した。 「それ飲んだら寝てくださいねー」 「風呂入りたい」 「今日は我慢ですよ、汗拭いて着替えるだけしましょうね」 「···お前、なんか子供扱いしてねえか」 「んー、なんか弟みたいだなぁって」 「ああ、確かお前弟いたな」 「死にましたけどねぇ」 弟のことを思い出して苦しくなる時期はもうとっくに過ぎた。 その代わりやけに懐かしく愛しく思えて泣きたくなる時もある。あの時なんで俺は助けられなかったんだって。 まあ、そんなことも───··· 「···大丈夫か」 「大丈夫ですよ。ってほら早く薬飲んで。着替えましょ」 今更後悔したって遅いんだけど。

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