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第33話
若を寝かせて、自分も床にゴロリ寝転んだ。
目を閉じて思い出すのは弟、礼央(レオ)のことだった。
”兄ちゃん”と人懐こい笑顔で駆けてくる礼央の姿を思い浮かべる。その後には必ず、動かない礼央が白い部屋で眠っている姿を思い出した。
ハッと息を吐いて眠ることができずに部屋を出て廊下に座り込む。どうしてあの時助けられなかったんだろう。今ならできることを昔の自分はできなかった、その悔しさに怒りが湧いてくる。
「赤石?」
「···あ、八田ちゃんじゃーん」
「ちゃん付けやめろ、何してんだ、若見てたんじゃねえのか?」
「今は寝てるからね。俺はちょっと休憩。」
へらっと笑ってちょっとくらいいいでしょー?って言ってみるとぐっと眉間に皺を寄せた八田は俺と同じ目線の高さになるようにしゃがみ込み顔を覗き込んできた。
「わ、何?」
「何かあったのか」
「ちょっと疲れただけだよ」
「そうか。交代しようか?」
交代···ちょっとだけしてもらおうかな、風呂に入ってきたいし。
「風呂入ってくるから、それまでいい?」
「ああ」
八田がそう言ってくれたからすぐに立ち上がって、抗争が起きて家に帰れなくなった···なんて時のために幹部室に置いてある着替えを持って風呂場に向かう。
「誰か入ってるかなー」
できるなら1人がいいんだけど。
お願いって願いながら、脱衣所で服を脱ぎ風呂のドアを開けた。
「っしゃ!!」
そこには誰もいなくて嬉しくて小さくガッツポーズを取った。
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