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第40話

夜、燈人が仕事に行っちゃって俺は一人寂しくテレビを見ながら携帯をいじってた。 そしたら突然震え出して燈人と会う前よく遊んでた女の子。美香(ミカ)ちゃんの名前が表示される。珍しく電話だしどうしたんだろうってそれに出た。 「はーい」 「ま、真守助けて···っ」 「どうしたの?」 「彼氏に、別れよって話したらっ、暴れ出してっ」 美香ちゃんの声の後ろで男の怒鳴り声が聞こえる。これは助けに行ってあげないとなぁって場所を教えてもらいそこに向かって走る。 「美香ちゃん、俺がつくまで電話切らないでね」 「うんっ、早くっ」 「大丈夫だからね」 走って言われた場所、どうやらそれは美香ちゃんではなく彼氏さんの家のようで。そこまで来ると男の声がうるさく響いていた。 「今着いたよ、俺のこと見える?」 「ぇ···あ、見えるっ」 「おいで」 そう言うと走って俺のところに来て怖いと抱きついてきた美香ちゃん。小刻みに体が震えている。それだけ怖かったんだね。 「彼氏と別れようとしたんだ?」 「う、ん···前から暴力とか酷い言葉言ってきて···もう辛くて···」 「間違ってないよ。よしよし」 俺の腕の中で子供のようにわんわん泣き出して止まらない美香ちゃん。すごく綺麗で大人っぽかったこの子の前の姿が嘘みたい。 「ねえ、ここで隠れていられる?俺あの男黙らせてくるから」 「な、殴るの···?」 「必要ならね。何もせずに大人しくしてくれたらいいんだけど···」 「あ、あたし···」 「美香ちゃんは静かにここで待ってて。大丈夫だから、ね?」 美香ちゃんに物陰に隠れてもらって俺は男が暴れてるであろう家に入る。 手当たり次第に壊していったのかガラスの破片やタンスの木とかがそこら辺にボロボロ落ちてて危ない。靴を履いたまま中に入るとバットを持った男がリビングに立っていてこっちをじろっと見てきた。 「誰だお前」 「ねえ君さぁ、別れを持ち出されたくらいでこんなになるの?」 「うるせえ」 「うるさいのは君だよ。さっきから声でかいし外に丸聞こえなんだけど」 クスクス笑うとそれに怒ったみたいでバットを持つ腕が高く上げられる。 「ねえ、人を殺したいの?それで傷つけたいの?」 「あぁ!?」 「それじゃあ無理だよ。俺は君なんかに傷つけられるような弱い奴じゃないからね」 瞬間、振り落とされたバット。それを右に一歩歩くことで俺の横をすれすれで落ちていく。 「そんな物に頼らないといけないんだー」 振り下ろしたことで一度力が抜けたそこ。大人しくしてくれそうもないし、と鳩尾に一発拳を打ち込んだ。ゲホッと噎せた男は膝から崩れ床に寝転がる。 「弱すぎでしょ。」 男をソファーに運び腕と足を縛って顔をパチパチと叩き目を開けさせる。 「ちょっとは冷静になった?」 「あんたは···?」 「もう美香ちゃんを離してあげてよ。君が美香ちゃんを傷つけるからいけないんでしょ?」 首を縦に振り項垂れる男の肩をポンと叩く。 「もう美香ちゃんに近づかないって約束できる?」 「···ああ」 「本当だね?次美香ちゃんに近づいてこんなことまたしようとしたら···今度こそ警察に連れてってあげるから」 そう言うと一瞬怯えた顔をした男。この調子なら大丈夫だろうと思って腕と足を縛ってたタオルを取ってあげてから家を出た。

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