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第45話 燈人side
仕事であいつと別れてマンションの下に止まってた組の車に乗り込む。
俺の部下として働く羽島(ハジマ)が「何かいいことあったんですか?」と聞いてきた。
「ああ、ちょっとな」
「例の恋人ですか?最近機嫌いいですもんね」
「まあ···」
正直あいつに本気になるだなんて思わなかった。
年下の見た目より少し幼い性格。いつでもヘラヘラ笑ってるし、すぐに何かにイラついたりするから年齢より子供みたいで···
でもそんなところがたまに可愛かったりする、極たまにイラつくけど。
「若、今日は繁華街を···」
「見て回るんだろ?···ったく、どうせここら辺は浅羽組が仕切ってるんだ。馬鹿みたいに騒ぐ奴なんていないだろ。」
「浅羽組に任せとけばこの町は安全でしょうね」
任せる···それだけじゃダメなんだよと思いながら俺はどう動いていればいいのかまだ掴め無いから何も言うことができ無い。
「なあ、」
「はい?」
「浅羽組の···赤石真守ってやつ、知ってるか?」
「赤石···ああ!金髪のあのヘラヘラ笑ってるやつですよね!」
「会ったことあるのか?」
「以前何かで親父が浅羽組にお邪魔になった時、浅羽の若頭の方と親しげに話してましたよ?空気も読めるやつで···あ、でも赤石より目につくのはやっぱり早河ですね、それから黒沼に···」
赤石は浅羽の若頭と仲が良いのか。そういえば前買い物に行ってたとか言ってたもんな。
「早河は俺も知ってるが···黒沼って?」
「多分浅羽組の組員達に幹部の中で一番に信頼を得てるやつなんじゃないですかね。黒髪の落ち着いた長身のやつです」
こんな感じのって言われてぼんやりと姿は頭に浮かぶがはっきり思い出せない。それよりその組員達に信頼されているっていうのが気になる。
「そういえば、黒沼は一度死にかけてるとか···記憶喪失にもなったりしたみたいですよ」
「何で」
「抗争で撃たれたショックみたいです。今はもう思い出したみたいですけど」
「撃たれたのか」
「はい、仲間を庇ったとかなんとか。」
ふーん、って返事をした。
仲間を庇って撃たれるなんてこと俺にはできるだろうか、と真剣に考える。
「俺にそれができると思うか」
「何を言ってるんですか!そんなこと俺が許しませんよ!!」
「············」
そうだ、俺は守る立場でもあるが守られる立場でもあるんだ。改めてそれを思い長く深く息を吐いた。
「他の奴ら、もう集まってるみたいなので、ちょっと急ぎますね」
「ああ、悪い」
さあ、仕事を始めよう。
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