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第56話
「えー今日いくのー?」
「今日はユキがトラのところにいるからな。ちょっと遅くなっても平気だって。さっき電話で」
「···わかった。」
ユキくんとはみっちゃんが育てている男の子の事。
そんなユキくんのことを出されちゃわがまま言えないや。
車でここまで来ているみっちゃん。
だけど燈人の住んでるマンションの周りは何も無いし、歩いていこうと言うと面倒臭そうにだけど仕方ないかと頷いた。
「その若頭の名前、何て言うんだ」
「桜樹燈人」
「あんまり顔覚えてねえんだよな」
「俺もね、初めは桜樹組の若頭だって知らなくてさ」
「町で声かけたのか」
「せいかーい!」
そんな会話をしてケラケラ笑っているとあっという間に燈人の家に着いた。ピンポーンってチャイム鳴らして待ってるとダラダラした感じで燈人が出てくる。
「おかえり」
「ただいま。連れてきたよ、黒沼命ね」
燈人に軽く礼をしたみっちゃん。入れって言われてササッと中に入る。
中に入ってリビングのテーブルの席に着いた。俺が燈人の隣に座って燈人の前にみっちゃんが座る。
「桜樹組の若頭、桜樹燈人だ」
「浅羽組の幹部の黒沼命です。」
なーんか、変な空気。
堪らず「あはは···」って笑ってると変なものを見る目で燈人に見られて慌てて口を閉じた。
「俺と、こいつの関係だけど···初めはセフレで、今は恋人。わかってると思うが誰にも言うんじゃねえぞ」
「···あの、失礼だとは思いますけど、遊びなんかじゃないですよね?バレると危ないのはわかります。それがあなただけじゃなくて、赤石もってことも。···きっと、赤石の方が危ない。あなたは若頭という高いところにいるけどこいつは、ただの極道の幹部ってだけだから」
「···そうだな、俺もわかってる。俺は全く遊びじゃねえよ」
なんかそんなことを言われてドキドキしてきちゃってテーブルの下、みっちゃんから見え無いところで燈人の手に触れた。そしたらグッと手を握ってくれる。
「誰にも言うな、俺らの関係を聞かれたら、昔ちょっと関わったことがあった。それだけでいい。これはお前もだぞ」
燈人がお前もだって俺を見た、わかったって頷くとよしよしって頭を撫でられる。
「わかりました。俺は誰にも言わない。正直あなたがどうにかなるのにはどうでもいいけど、赤石は大切な仲間だ。危険に晒したくない」
「ああ、···すまない、頼む。」
それから少しどうでもない話をしてみっちゃんは帰っていった。玄関で二人見送ってドアが閉まると後ろから燈人が抱きしめてくる。どうしたの?って鍵を閉めながら聞くと首にキスをされながらシャツの裾から手を差し入れられる。
「ちょっと···」
「黒沼命、いい奴だな」
「···うん、みっちゃんは本当、いい人だよ」
あんなことしたのに、あんなことがあったのに、俺のことを大切な仲間なんて言ってくれる。
「んっ」
「風呂は?」
「入るから、離して」
「ん」
パッと手が離れて着替えを持って風呂場に行く。服を脱ぐと比較的筋肉もあってガッチリした体、所々に傷もあってとても綺麗だなんて言えないなぁと思う。
なのに、こんな体なのに燈人は抱いてくれるんだよねぇ···。
いや、こんな体だから抱いてくれるのかも。最初俺に触れた時腹筋に触ってびっくりして、嫌か聞いたらこっちのがいいって言ってたもん。
少し嬉しくなりながら、一人でお風呂に入った。
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