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第70話
「風邪って大丈夫か?」
「大丈夫ですよー、ちょっと寝たら治るんで」
夜、若から電話があって風邪は大丈夫かと心配された。けど仮病なわけだから正直心が痛い。
「無理すんなよ、辛いなら明日も休め」
「そんなにひどくないですから、大丈夫です」
「そうか···今日は早く寝ろよ!」
「若ぁ。俺、子供じゃないんですけどぉ」
ケラケラ笑えば「悪い、悪い」と謝られた。
「じゃあな。ゆっくり休め」
「ありがとうございます」
電話を終えてからはぁ、と息を吐いた。
しばらく家から出たくない。でもそんなことは無理だから嫌になる。寝室から毛布を持ってきてソファーの上で小さくなる。
「嫌だ嫌だ。家から出たくない。絶対出ないもんね」
毛布に包まれ暗いそこで小さくなり、何度も嫌だ嫌だと繰り返した。
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