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第75話
いつの間にか寝てしまったらしくて目を開けたら見慣れない天井が広がってた。
辺りを見回すと点滴が繋がれてて···ああ、トラの所に来たんだ、とさっきまでのことを思い出した。
「あら、起きたの?」
「っ、」
トラが俺のそばまで寄って来た。それが少し怖く思えて慌てて起き上がりベッドの端で小さくなる。そのせいで頭がぐらりと揺れて痛い。
「どうしたの?」
「く、来んな···」
「あんた熱高いんだから寝てないと」
「来るなってば!!」
こっちに向かって歩みを止めないトラに枕を投げつけた。でも熱のせいで力も出なくてトラに当たることなく地面に落ちていく。
「み、みてくれてありがとう、もう大丈夫だから···」
「大丈夫じゃないでしょ」
首を左右に振って否定しようと思ったのに気持ち悪くなって口を押さえる。
「は、吐くっ」
「ここに吐いていいわよ」
目の前が歪んで気持ち悪い。
ここって差し出された袋に溢れてきたものを吐き出せば力が出なくなってベッドヘッドにもたれかかった。
「はぁ、···んっ、はぁ···」
「どうしたの」
「何でも、ない···若は···?」
「ハルなら今命と何か話してるけど」
俺の手から袋をとってそれを片付けるトラ。
口の中濯ぎなさいってコップとバケツを出されて、ちゃんと言われた通りにするとそれも片付けていく。そんな姿ボーッと見ていた。
「ちゃんとご飯食べてる?」
「ん」
「···嘘ね、いつから食べてないの」
「昨日からだから、何ともないよ。若の所、行く···」
「ダメ、ハルなら呼んできてあげるから」
ちゃんと寝ておきなさいって言われてそこで待ってたらすぐに若が来てくれた。
「大丈夫か?」
「···ごめんなさい」
「謝るようなこと、してないだろ。悪かった、体調悪いのに連れ出したりして」
「若は悪く、ないので謝らないでください」
ヘラリ、笑ってみせると無理しなくていいって髪を撫でられ、そのまま寝ろってゆっくり体を倒された。
「ここにいてやるから」
「···すみません」
「いいから」
トントンって一定のリズムで体を優しく叩かれる。それが心地よくてまたすぐに眠ってしまった。
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