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第78話

その日は結局、日付が変わってもなかなか眠れなかった。若は隣のベッドでスヤスヤ眠っていて、トラは違う部屋で自分の仕事をしていて。 「おはよう」 「···おはよう」 「あら、クマできてるじゃない、眠れなかった?」 「···ちょっと、ね」 熱は下がったみたいだし、もう大丈夫だろって起き上がり地面に足をついた。 「車呼ぶから、待ってろ」 「はい」 部屋を出て行った若。 ベッドに腰掛けてまだちょっとボーッとする頭で部屋を見回したりトラを見たり。 トラは俺の視線に気づいて近くに寄ってきてそっと俺のことを抱きしめてくる。 「そんなに頑張らなくていいんだから、しんどいときは休みなさいよ」 「···うん」 「また、近いうちに来なさいね」 「その時にはもう、いつもの俺に戻ってるよ」 小さく笑いながら言うとちょっと真剣な顔をしたトラ。 「そうだといいけど、無理はしないで」 よしよしと撫でられて部屋に戻ってきた若にそんなところを見られ恥ずかしくなってくる。昨日の方が断然、そうな筈だったのに。 「車来たら、お前の家に送ってもらうから」 「あ、すみません」 俺の家···寂しいあの1人の家に帰るのか。

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