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第82話
いろんな事を思い出して吐気が止まらない。あの頃笑えって強がってた自分に嫌気がさす。
一人になったあの日から誰かに愛して欲しくて必死で、だからたくさんの人と体の関係を持った。
その時その時、俺だけを見て愛してくれるからそれが嬉しくて遊びは止められなかった。
その時間だけが幸せだったから。
でも、やっぱり一番幸せだったのは燈人といた時。
だからそれが無くなった今の俺は空っぽみたい。初めの弱い自分にまた戻ってしまった。
「気持ち、悪い···」
走ってトイレに行き溢れたものを吐き出す。
もう出るものもないのに。それに泣きたくなんてないのに涙が出てきて、苦しくなってそこに倒れこんだ。
このまま、ご飯を食べなかったら死ねるかもしれない。そしたら礼央に会えるかも。
そう思うと口角が自然に上がった。礼央と一緒にいたあの時間も、俺は幸せだったから。
途端、死にたいっていう言葉が頭の中を埋め尽くす。
死んだらどうなる?もう何も考えなくていい?
誰かに愛される事はきっとなくなるけれど、それを悲しいとも辛いとも思う事がなくなるだろう。
それはいいのか悪いのかわからないけど、今の俺にとっちゃいい事でしかない。
ふらり、力のない足で立ち上がり家を出た。どこか誰にも見つからないような場所へ。
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