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第85話

目を開けたら見慣れた天井が見えた。見慣れてるけどなんだか久しぶりと思える。 たった数日前だったのに。 「起きたか?」 「あ···」 隣で寝てた燈人がそっと俺の額に触った。「熱は下がったな」ってそのまま髪を撫でてくる。 「お、れ···」 「昨日、お前が寝てから今まで、死んだみたいに寝てるから、ちょっと怖かった」 「昨日···?」 「ああ、ずっと寝てたぞお前」 そうなんだって目を閉じようとした時燈人の手が伸びてきて咄嗟に小さく丸まった。 怒られるのは嫌だ、怒られて俺のことが嫌になって人が離れていくのが嫌だ。 ガクガク震えているとギュって抱きしめられてピタリ震えが止まる。 「何がそんなに怖い?」 「···っ、ぁ、」 「無理には話さなくていい、でも俺の話聞いてくんねえか?」 って優しい声で言われて、小さくなるのをやめて燈人に抱きついた。 「お前がいなくなって、すぐに親父のところに行ったんだ。それで正直にお前とのことを話したら思い切り殴られてさ、格好悪りぃけど、でも認めてもらうために頭下げるしかなくて、ずっと頼んでた。そしたらやっと昨日、認めてくれたんだ」 俺は、燈人から離れたら桜樹組も浅羽も何も傷つかなくて済むと思ってた。だから諦めてたのに···燈人はそんなこと、なかったんだね。 俺は1人で諦めて、あんな恥ずかしいところをいろんな人に見せて··· 「お前勘違いしてるだろ」 「···え」 「俺だってお前がいなくなった時、すぐに追いかけることは出来たはずだ。そうしなかったのは俺も無理なのかもしれないってほんの少しだけ···思ったから」 え。と思って顔をあげた、燈人は申し訳なさそうな顔で俺を見て俺の頰を撫でる。 「でも、街に居た時、お前のことを···たまたま黒沼命に会って聞いた。体調崩してることも、精神的にやられてるってことも。すげぇ怒られてさ、早くお前を助けてやんねえとって必死だった。なのに、こんなに遅くなっちまって···悪い」 何も悪くなんてない。 謝るのは俺の方なのに何でだろう言葉が出てくれない。ただ燈人に抱きつくことしかできなくてそのまま動けずにいた。 「起きれるか?」 「やだ」 首を振って嫌だというとわかったって背中を撫でられる。 「もうちょっと、寝て、起きたら飯食おう。お前ずっと何も食ってなかったんだろ?」 「でも、食べれないし」 「ちょっとでもいい。何か食べたいものとかねえか?これだったら食べれるってやつ」 「···ごめん、何も、」 久々に感じる燈人の鼓動、匂い。 燈人の胸に鼻を寄せてスーって匂いを嗅ぐと安心する。 「何嗅いでんだよ」 「安心、する」 「そうか」 止めようとはしないから、それを何回か繰り返す。 「起きる」 「ん。」 燈人に支えられながら座って立ち上がる、リビングに出て椅子に座るとよく出来ましたってキスをくれた。

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