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第98話

それから数日経って、俺は久しぶりにスーツを着てた。髪もちゃんと整えて地味に緊張しながら燈人の前に立つ。 「これで、いいよね」 「いいだろ。ていうか、いつもの感じでよかったんだぞ」 「それは違うと思う」 そう、今日俺は燈人の親父さんに会いに行く。いつも通りの燈人が俺の姿を見て眉を寄せる。 「いつもの方がいい」 「何で」 「···なんか、仕事って感じがして嫌だ」 「意味わかんない」 軽く肩を叩いて「さあ、いくか」って燈人が立ち上がった。 「殴られそうになったら守ってね」 「ならないと思うけどな」 「一応じゃん。正直俺、怖いもん」 燈人に抱きついて額をグリグリと肩に押し付けた。よしよしって髪を撫でてくれるけれどまだやっぱり少し不安で。 「···好きって、言って?」 「好きだ」 「もっと」 「好きだ、愛してる」 キスをしてくれる燈人に対する、愛しいっていう感情が、怖いっていう感情を消し去ってくれた。

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