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第100話
組長の部屋の前に来ると心臓がやけにうるさくなった。燈人の手をグッと握って深呼吸をしてからパッと手を離す。
「繋いでてもよかったのに」
「ダメでしょ」
小声でそうやって会話してから燈人が「親父、入るぞ」と声を出した。中からは「おう」と低い声が聞こえてくる。中に入ると見たことのある人がそこにいた。
「どうした···って、そいつは···?」
「この前話したろ、俺の恋人」
「ああ、そいつがな···」
俺は堂々と胸を張りいつも組で見せているように軽く笑顔を浮かべた。
「赤石真守です」
「ああ。浅羽組の幹部なんだってな。あんまり覚えてねえが···」
「以後、お見知り置きを」
頭を下げて燈人の後に次いで部屋の中に入った。
「いい、そんなに畏るな。」
「えっと···はい」
「座れ。」
ソファーに座れって言われて燈人の座ったところの隣に腰を下ろす。目の前に座った組長さんは俺を見て柔く笑った。
「初めはな、恋人が男とかぬかしやがるから頭イカれたんじゃねえかって思ったんだがな、それくらい認めてやれねえで組長なんてできねえだろ。」
「え···」
「多様性を認めるってのか?別に気持ち悪いなんて思わねえし、自分の息子なら尚更な。」
「あの···」
「ん?何だ」
「俺のせいだって、思わないんですか···?俺が燈人をそそのかしたとか···」
「思わねえな。聞いたぞ。お前このバカ息子と別れてから死のうとしたんだろ?そこまでこいつのこと大切で、こいつを失うのが苦しかったんだろ。」
俯いてると髪をガシガシと撫でられる。
何だかそれが心地よくて、じんわりと心が暖かくなった。
「まあ、俺も俺の嫁もそれは認めてるけどな、お前のところは大丈夫なのか」
「···あ、俺は大丈夫です。親が今どこで何してるのか、生きてるのかも知らないので」
「そうか。まあこれからはお前も俺の息子だ。だからいつでもここに来い。何かあったら助けてやる。」
優しい人だと思った。燈人はこんな優しい人に育てられたんだ、俺とは違うなと。
「ありがとう、ございます···」
だから暖かくなったのと逆に、苦しくもなった。
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