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第110話
「おい真守」
「···何」
部屋に入ってきた燈人が俺の背中をポンと撫でる。
「どうした」
「別に、何でもないから気にしないで」
「何でもないこと無いだろ。啓介(ケイスケ)がいるからか」
「ああ、あいつ啓介って言うんだね。」
「ああ、俺の幼馴染」
「···あっそ。」
そんなのどうでもいいけど。スクッと立ち上がり一応置かれてる俺のベッドに腰掛ける燈人に近づいて膝に乗る。
「キスして」
「どうしたんだよ」
「いいから、キスしてよ」
そう言うと後頭部に手を添えられて噛みつくみたいなキスをされる。嬉しいし気持ちいいのに···満たされない。
「っ、は···ぁ、」
「真守」
「ん、何」
「本当のこと言え、どうしたんだ」
燈人からの厳しい視線、それは少し嫌で逃げた。パーカーを着て財布と携帯を持ち部屋を出る。
「真守!」
「きょ、今日はっ、帰ってこない!」
家を出て走った。行く場所は思いつかないけど···あ。そうだ。
「燈人の、お父さんとこ、行こうかな」
でもそれにしては服がふざけてるか。
うーん、と悩みながらプラプラそこら辺を歩いてると黒い高級車が俺の隣に止まった。
何だと思ってそっちを睨むように見てるとドアが開き「おい」と声をかけられた。その声が聞いたことがある声で近づくと
「一人か?燈人はどうした?」
「わー、組長さんだ!」
「デカイ声でそれを言うな。乗れよ」
「···え、でも」
「燈人と喧嘩でもしたか?」
「···············」
「みたいだな、早く乗れ。」
言われた通り車に乗り込んで燈人のお父さん、組長さんと適当にペラペラ話していた。
「何があった」
桜樹組について組長さんの部屋に通されてそこで話をする。
「俺が、ちょっと、嫉妬しちゃって···」
「嫉妬?」
「···仕事、終わって帰ったら啓介って燈人の幼馴染がいて」
「ああ、啓介な」
ふんふん頷いた組長さんは「あいつはなー···」と話し出した。
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