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第112話

燈人の部屋にいていいぞって言われてそこに入るとすごく安心できた。燈人の匂いがする。 お風呂も、着替えも貸してくれた組長さん···じゃなかった、親父さん。燈人のベッドに寝転んで小さく丸まった。 「ん···」 目を閉じるとだんだん眠たくなってくる。 布団の暖かさと匂いに、まるでそこに燈人が居るみたいに思えてじんわりと心が温かくなった。 「···とーり」 そのまま、布団にくるまって寝てると部屋のドアが開く。慌てて起き上がってドアの方を見ると燈人が怒ったように立っていてビックリした。 「何携帯の電源切ってんだお前」 「あ、えっと···」 口をモゴモゴして閉じると俺に大股で近寄ってきて強く抱きしめられる。 「啓介が、いたからか?」 「···ん」 「怖かったのか?嫌だったのか?」 「怖くはないよ。ただ···俺が嫉妬しただけ」 「嫉妬···?」 肩を持たれグッと離される。見つめあって数秒、燈人は優しく俺の頬を包む。 「何に、何で嫉妬した」 「なっ···」 「俺の目、見て言え」 ニヤリと笑ってる燈人、分かってるくせにそうやって聞いてくる、すごい意地悪だ。 「と、とーり、の···」 「目逸らすな」 ゆっくり燈人から視線を逸らすとグイッと顔を無理矢理向けさせられる。 「燈人の、こと···俺より啓介くんの方が知ってるって思ったら···ムカついたの」 口を閉じて視線を逸らす、今度は無理矢理向かされはしなかった。 「ごめん···こんな、ちっさい男で、ごめん」 燈人の手から逃げて立てた膝に額をくっ付けた。

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