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第118話
青くなってる手。人を殴ればその分自分だって痛い。だけどこの痛みにはもう慣れた。
幾分か落ち着いた今、立ち上がり伸びをしてどこに行こっかなーと軽い気持ちで足を動かす。
自然と向かった先はあの日俺が消えようと思った時に来た海。
浜辺のサラサラとした砂の上をゆったりゆっくり歩いた。少しして冷たい海に足をつけてふふっと笑う。
あの時も苦しかったけど、今も苦しい。けれど今の苦しさとあの時の苦しさは全く違うものだから死にたいなんて思わない。
海からあがって浜に腰を下ろした。
今日はこのままここにいよう。何も考えないでいたい。
そう思うけど本当は考えないと答えなんて見つからないし考えないとこのまま、苦しいままだ。
今だけ休憩。と思ったところで携帯が鳴る。
確認してみたら燈人からで「どうしたんだろ」と不思議に思いながらも掛かってきていた電話に出た。
「もしもし」
「落ち着いたか?」
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
「今どこだ。もしかして海にいるのか···?」
波の音が聞こえたのかな。
それにしてもすごく不安そうな声だ。ガサゴソと電話口では慌てたような音が聞こえる。
「迎えに行く」
「え、いいよ」
「よくねえよ。お前また変なこと考えてるんじゃねえだろうな」
「変なこと?」
燈人のいう変なことはだいたい予想がつくけど、今回はそんなこと考えてない。俺のことで燈人を悲しませるつもりなんて微塵もない。
「本当に大丈夫なんだって。ちょっとけん···あ、遊んだら落ち着いたから!」
「今喧嘩って言ったか」
「い、いい言ってない!喧嘩し、してない!」
何だか燈人怒ってる?!
声が急に低くなって向こうで玄関のドアが閉まる音が聞こえた。
「そこにいろよ」
「···············」
「返事は」
「···は、い」
燈人が怖いんだけど。
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