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第119話
暇だからまた海に足をつけて遊ぶ。
水を蹴って飛沫をあげると月の光に反射してキラキラと光ってすごく綺麗だ。
「これで俺が女の子だったら完璧だったと思うんだけどなぁ」
景色的にも、世間的にも。
ぶつぶつ独り言を呟いてパシャパシャと歩いた。
そういえば、と思い出して海に手をつけると人を殴ったせいで熱を持ってた手がひんやりと冷えていって気持ちいい。
「無意味に人を殴ったの、いつぶりだっけ?」
いや、この前もあったか?頭をひねって思い出そうとするけど思い出せないからもういいや!
そうして1人で遊んでると浜から砂を踏む足音が。
振り返ると燈人がそこにいて、眉間にすごい皺を寄せてる。
海から出て燈人に近づくとギュって抱きしめられた。
「よかった···」
「だから、大丈夫だって言ったじゃん」
「それでも怖かったんだよ」
俺を抱きしめる燈人の手と声が小さく震えてるのがわかる。すごい心配かけちゃったんだね。燈人を抱きしめ返すと「はぁ···」と息を吐いて俺から体を離した。
「手、見せろ」
「えっ」
「早く見せろ、喧嘩したんだろ」
「い、いやいやいや、喧嘩してないよ、楽しくワイワイしてただけ!」
「早くしろ」
低い声。
嫌々ながらも手を出したら手首をがしり掴まれて青くなった手を見られた。
「お前、どんだけ力込めて殴ったんだよ。相手は何人だった。怪我は···ここ以外してねえか?」
「大丈夫!」
「大丈夫かは聞いてねえ」
「相手は多分俺より年下で結構いたよ。でも仮にも極道の幹部だし、怪我はしてないよ」
ヘラリ、笑ってみせるとため息を吐いて俺の髪をガシガシ撫でた。
「何に悩んでんだ」
「あー···ううん、わかんないんだよそれが。」
「はぁ?」
「何かずっと苦しかったんだ。自分が何をどうしたいのかもわかんないから···」
「···そうか」
またぐいっと抱きしめられて今度はキスをされた。
舌が侵入してきて口内を犯す。その感覚が気持ちよくて自分からも舌を絡ませた。
「気持ちぃ···」
「···早く帰るぞ」
「帰ったら、エッチしたい」
「仕事は?」
「明日はないよ」
ぎゅっと強く抱きついて燈人の匂いを嗅いだ。
その匂いはいつでも俺を安心させてくれる。
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