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第124話

それから毎日のようにお兄さん達は燈人の目を盗んでは、俺に拳を振るったり、暴言吐いたりと子供みたいなことばっかりしてきた。 そろそろ体もだるいし、燈人に散歩に行ってくるとか言って浅羽組に行ってみる。すれ違う組員達がおっきい声で挨拶してくるから「おつかれ」と適当に返事をした。 若の部屋に行こうと思ったけど、今は親父に会いたいかも。軽い足取りで親父の部屋に行って声をかけると「おー、入れ」と返事をくれて俺はサササーと部屋に入る。 「親父ぃ」 「どうした?お前しばらく桜樹にいるんじゃなかったのか?」 「でも、あの、今はちょっと逃げてきたんです」 「そうか。無理してないか、って聞きてえとこだが···お前怪我してるな?」 「親父には隠せないなぁ···」 ふふっと笑うと親父は眉間にしわを寄せて「大丈夫か?」と俺の頭を撫でた。 「大丈夫です。でもちょっとだけここにいさせてください」 「ああ。好きなだけいろ。だがその前に手当てだな」 そう言った親父は俺の腕をガシリ掴んで軽い手当てができる部屋まで連れてきて、中にいた組員に俺のことを「頼む」と言って部屋から出て行った。 「赤石さん。何でこんなに怪我してるんですか?」 「本当、何でだろうね?俺もわからないや」 組員は困ったみたいに素早く手当てをしてくれてそこにあるベッドに俺はそのままごろりと寝転んだ。 「ねえ、今は幹部、誰がいる?」 「えっと、確か···早河さんと、命さんと、補佐もおられますよ」 「ああ、鳥居ね。中尾も八田もいないんだ?」 「はい、確か今は出てます」 こんな奴が極道でいいの?ってくらい目の前にいるこいつは優しい。名前なんだったっけ?確か前に優しいみっちゃんが拾って、今は八田と一緒にいるやつだよな。 「ねえ、ごめん。名前忘れたんだけど教えてくれない?」 「世那です」 「世那ね。今度はちゃんと覚えておくよ。」 「ありがとうございます。」 ニコニコ笑って大丈夫という世那。可愛い奴だなぁといつも俺が親父達にされてるみたいに世那の髪をワシャワシャと撫でた。 「何ですか?」 「あれ、怒らないの?」 「だって、赤石さん楽しそうだし」 「ふふっ、うん、今は楽しいね」 くすくす笑うと世那もつられるように笑い出す。 そうしていると携帯が震えて燈人から「帰ってこい」という内容のメッセージが来ていた。 「はぁ。じゃあ俺帰るね。また話そうね、世那」 「もちろんです!!」 世那は俺を門まで送ってくれて手をひらひらと振ると頭を下げていた。

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