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第129話
こそこそ桜樹組を歩きまわってあのお兄さんを見つけた。
携帯でカメラを開けてコッソリと写真を撮る。
それをみっちゃんに送って燈人の部屋に逃げるように入り「はぁ」と息を吐く。
「真守?」
「あ、燈人、ただいま」
「···その手、何だ」
「へ?」
ハッ!と思って左手を素早く隠す。
それを許さなかった燈人は隠した左手を無理矢理出させて俺を鋭く睨んだ。
「これは何だ!」
「え、っと···」
「早く言え」
声が低い。完全に怒ってる。黙ってようと思ってたけどこれは難しいかもしれない。
「真守ッ!」
「ご、ごめん、ごめんなさい」
口から出たのは何故か謝罪の言葉。
自分でも何で謝ってるのかわからなくて燈人と目を合わすことができない。
「謝って欲しいわけじゃねえんだよ。さっさと答えろ、これは何だ」
「···骨、折れた」
「何でだ」
「それは···」
まだ言っちゃダメだ。唇を噛むとさっき噛んで血が出ていたところからまた血が溢れてくる。
「噛むな」
「っ、あぅ」
口に指を突っ込まれて驚いて顔を上げると燈人と目が合った。俺のことを心配そうに見てる。燈人は滅多にそんな顔をしないから、そんな顔をさせてるってことに申し訳なく思えた。
「ん、っ、」
口に入れられた指を舐めて軽く噛む、ゆっくり抜けてった指、けれど今度は唇に燈人の唇が触れた。
「ふ、ぅ···」
舌が入れられて血の味がする。
それは不味くて嫌なのに燈人とのキスを止めたくなくて我慢した。不味い血の味だってキスのおかげで気持ち良くなれば感じなくなってしまう。
「ぅ、ぁ···ん」
「真守···」
「ん、何···?」
唇が離れ頬に触れられて首筋をツツツと燈人の舌が這った。それだけで体はゾクゾクと震える。
「と、り···エッチ、したい」
「夜、な」
「···うん」
何も考えられないくらい、めちゃくちゃに愛してほしい。
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