136 / 242

第136話

朝、起きて歯を磨いて顔を洗っているとどかっと膝を蹴られた。はぁ!?と思って顔を上げ後ろを見ると石川さん。 「ちょっと来い」 「···············」 だるいなぁ、なんて思う反面、やっと殴れる!というウキウキ感もあった。 言われた通り石川さんについて行くと紙を渡されて頭にハテナマークが浮かぶ。 「お前のこと調べた」 「···はは、あー、そう」 「浅羽組幹部のお前が何でここにいる。若とどういう関係なんだ。」 「何?俺が浅羽組だって気付いてビビっちゃった?」 浅羽組はここ桜樹組よりも立場は大分上になる。そんなとこの幹部を殴ってた事実にビビっているのかもしれない。 「違う。若とどういう関係かだけ気になった」 「答えないって言ったら?」 「また遊んでやるよ。ていうか浅羽組の幹部があんなに弱くていいのかよ」 馬鹿にしたように鼻で笑った石川さん。それにイラってきたのは置いておいて。燈人との関係を今の所はそんなに知られたくはない。俺も燈人も人を選んで自分たちの関係を口にしてる。 「教えないよ、バーカ」 「···ああ、そうかよ」 拳を作った石川さん。こっちに向けてそれで攻撃すると思えば足払いをされてバランスが崩れた。 慌ててバランスを整える為に距離を取り服についた汚れをパッパと払う。 「足払いされるとは思わなかったなぁ。狭いし、ここ」 「やれることは全部やるんだよ」 「あっそ。でも下手にこけたら俺、顎の骨まで折れてたかも。」 ケラケラ笑う、それが治まった頃に俺は拳を作り走って石川さんの頬にそれを突き出した。 ヨタヨタと後ろに数歩下がった石川さんの後頭部を両手で押さえ顔面に膝を入れる。石川さんの鼻から血がたらりと溢れてきてそれを拭った彼はニヤニヤ笑いながら低い体勢で俺に突っ込んでくる。 すごい勢いだ、だからここでまた膝を入れてやれば落ちるんじゃ?と思い俺も走って膝を突き出すと反射神経がないのか避けることをせずまた、まともに顔面に膝が入った。 「同じ技、二回食らって恥ずかしくない?」 「い、ってぇ···!」 仰向けに倒れた彼を見て俺はケラケラと笑う。 そうしていると黒いモヤモヤが自分の侵食するように溢れてきて、石川さんに跨り夢中で拳を振り下ろした。 「や、めっ···がっ!」 「っふふ」 今は誰も、止めてくれる人がいないから、いつの間にか意識を失ってる彼をずっと殴ってしまう。 血だらけになってる手、飛び散る赤い飛沫、服にそれがついても構わなかった。 「────真守ッ!」 俺がいないことに気づいたのか燈人がやってきて現場を見て眉を寄せ俺を羽交い締めにして止めようとする。 「離せ」 「おい、真守!」 「もう!邪魔だなぁ!」 振り向きざま、血がついた拳を燈人に向かって突き出す。突然のことで対処できなかった燈人は顔面にそれを受けて少しよろけた。 燈人が俺を呼ぶ大きな声に組員達は気付いたようで羽島くん達がゾロゾロとこの場所に集まり、燈人と同じように現場を見て眉を寄せた。 燈人は俺の手首をがしりと掴んで落ち着け、と何度も声をかけてくるけれど、その手を振り払い石川さんの元に歩み寄った。途端状況を把握した羽島くんや数人の組員達に体を抑えられてしまう。 「悪い、少し寝てろ」 燈人のそんな声が聞こえてトン、と首に衝撃。 暗くなっていく視界で見えたのは燈人の悲しそうな姿だった。

ともだちにシェアしよう!