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第138話

「馬鹿かお前は」 「は?」 「傷つけるだけじゃねえだろ」 そう言って俺の顔を両手で挟んだ燈人はふんわり笑って俺の手を握る。 「でも、ここ痛いくせによくあれだけやれたよな」 「ああいう時、あんまり痛いとか思わないから」 手に巻いてある真新しい包帯。 骨が折れてるのによくやったよね、本当。自分でも感心する。 「あ、お前が起きたら親父に伝えなきゃいけねえの忘れてた」 「俺行ってこようか?」 「いや、一緒に行く」 立ち上がった俺に次いで燈人も立ち上がった。 手を取られて引かれるがままに親父さんの部屋に向かう。 「燈人、手···」 「あ?もういいだろ。」 もういい、そう言った燈人の口角は緩く上がっていてなぜか俺もそれにつられてしまう。 「親父に何言われても気にするな。お前は正しいことをした。けど少しやりすぎただけだから。」 「···少しじゃないと思うけどな」 「ならそこだけ反省すればいい。」 親父さんの部屋に着くまであと少し。 そこで燈人は振り返り俺を一度抱きしめた。暖かい体温のおかげで体から力が抜けるような感覚になる。ふぅ、と小さく息を吐くと尖っていた唇に燈人の唇が落ちてきた。 「この件が終わったら、家に帰るぞ」 「···うん」 家に帰ったら、燈人と二人でまたゆっくり過ごすんだ。 ただ一緒にいて笑ってる想像しか今は頭に浮かばなかった。

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