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第139話

「痛くないか?」 親父さんの部屋に行くと1番にそう言って俺の手に触れた。絶対に怒られると思ってたからその優しい言葉に驚いて固まってしまった。 「い、痛くないです」 「そうか。無茶させて悪かったな」 そう言って骨が折れてる方の手を優しく撫でた親父さんは座れ、と言って俺たちを椅子に座らせたあと、親父さんも座った。 「石川が目を覚ましたら、あいつの組のことを聞く。」 「ああ」 「情報が集まって準備ができたら、そこを潰しにいく。」 「それにこいつは参加させねえぞ」 燈人がそう言って俺のことをちらりと見る。え!と燈人の言葉に驚いていると親父さんは一度頷いた。 「この件にお前は参加させない。桜樹組ではないからな」 何だか自分だけの空間にポツン、といるみたい。 自分は桜樹組ではないのなんてわかってるけど、そう言葉にしてほしくなかった。 「今から石川の件について話す。悪いが燈人の部屋にいてくれないか?」 「···わかりました」 親父さんの部屋を出てスタスタ歩く。燈人の部屋にいてくれって言われたけど、わかりましたって言ったけど!一人ぼっちになった気がして寂しくて、誰かいないかなとフラフラ廊下を歩いていたら羽島くんにばったり会った。 「げ、あんた···」 「羽島くん···」 「何でそんな顔してんの、若と喧嘩でもした?」 普通に話してくれる羽島くんに縋るように近寄り「暇だから相手してよ」と声をかけた。 「俺は暇なあんたと違って仕事があるんだけど」 「じゃあ簡単な仕事手伝うからさ、その間、お願い」 「···わかった、こっち来い」 羽島くんに、幹部室だろうか、そこに連れて行かれる。そこには勿論この組の幹部がいるわけで羽島くんの後に入ってきた俺を見て他の幹部らしき3人の男が目を見開いた。 「あっれー?!お前若の···なんだっけ?」 「何でもいいけど、何でここにいんだ?何で羽島と?」 「暇だから相手しろって。簡単な仕事手伝うからって」 淡々と答えた羽島くん。所狭しとその部屋に置いてあるソファーに座ってボーッとしてた。 「ほら、これホッチキスで留めろ」 すると横から何枚かを重ねた紙とホッチキスを渡される。 「あーい」 「他の奴らには若との関係言わないほうがいいんだろ」 「うん、まあね。俺はどっちでもいいんだけど、燈人の立場がどうなるかわかんないし···」 小声で話してると他の幹部の人たちが何の話だよ。と気になって周りに集まってくる。 「もー、邪魔だ錦(ニシキ)!」 「うるせえよ、最近ずっとここに住んでんだろ?なのに俺達だけお前の名前知ってるしさ、気持ち悪いから自己紹介させてくれよ」 「···早く済ませろよ」 「おう!俺は今井錦!よろしくなー」 錦は派手な髪色をしてて、性格は中尾に似てるかも。騒がしいとことか···俺が言えないけど。 「よろしく」 「おう!俺はお前のこと真守って呼ぶから、お前も錦でいいぞ!」 「あ、うん。」 心の中ではもう呼び捨てにしてたからそこら辺は気にしてないよ。フッと笑うと錦も笑って次はこいつ!と隣にいた暗い···というかクールというか、そいつを指差した。 「こいつは佐助(サスケ)って言うんだ!名倉佐助!人見知りであんまり自分から話さないと思うけど···」 「ふーん、佐助くん、よろしくね」 「···ん」 眠たいのか、目を擦ってあくびを零しながら返事をした佐助は床にドサリと座った。 「で、最後はこいつね、北條祐一(ホウジョウユウイチ)見た目厳ついけど中身は全然だから。毎朝花に水をやるのが日課」 「よろしく」 「よろしくね」 キャラ濃いなぁ。すごく面白い。 コクコクと頭が揺れてる佐助。ソファーに頭を乗せて本格的に寝だして可愛く思えた。髪の毛に触れて撫でてやるとゆっくり目を開けて俺を見てくる。 「···なに」 「いや、可愛いなぁって。犬?いや、猫。猫みたいだね」 「···嬉しくない」 そう言いながらも俺が髪を撫でる手を拒まない。 開けていた目を閉じて寝息を立て出した佐助。 「わー、佐助が喋った」 「静かにしてあげないと起きちゃうよ?」 「いいんだ、今は仕事中だからな。寝てるほうがおかしい」 羽島くんはそう言って佐助の横腹を軽く蹴った。

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