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第151話

「お前ら今から桜樹に行け」 親父が幹部室に来てお前ら、と俺と若、それから早河を指名した。 「桜樹に連絡が来たそうだ。若頭···燈人が拘束されて殴られてる動画付きでな」 「···う、そ」 思わず声が漏れる、親父はそんな俺に鋭い目を向けた。 「早く行け。何があっても助けてやれ」 「はい」 若に準備しろ、と言われ俺は黒いスーツに着替えた。早河も若もスーツを着て組の門の前に立つ。 ひどく鼓動がなって息が荒くなる。それは大切な人が痛めつけられてるから、なのか、ひっそりとこれから始まる戦いを楽しんでいるのか。後者であるなら俺はきっと最低な人間に違いない。 「赤石」 「何」 早河に名前を呼ばれそっちを向くと乗れ、と組員が運転してくれる黒塗りの車に乗り込んだ。 「お疲れ様です」 桜樹組に着くと親父さん自らが俺たちを出向いた。 親父さんや組員さん達は一斉に若に向かい頭を下げる。 若もお疲れ様です。と言葉を返して颯爽と厳つい男達の間を抜けていく。 「親父さんからお話は聞きました。うちの愚息が申し訳ありません」 「いいんです、俺は燈人の友人でもあるので」 若は薄く笑って俺の肩を叩いた。 「赤石がいつもお世話になってます。赤石とこっちが早河です。俺も、こいつらも燈人を攫った組を潰したいと思ってます」 「わかりました。奥にどうぞ」 親父さんは厳しい顔つきでそのまま組長の親父さんの部屋に向かう。若はそれについて行き、俺もついていこうとすると服の裾をツンツンも誰かに引かれた。振り返ると佐助と羽島くん。 「何?」 「大丈夫か?」 羽島くんがこそっとそう言ってきた。大丈夫、と笑うと佐助が手を伸ばしてきて俺の髪をワシャワシャと撫でてくる。 「···大丈夫だよ」 そう、今は不思議ととても落ち着いてるから。

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