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第159話
「ほら、風呂入れ」
「一緒に入ろうよ」
「無理だな、俺は今から片付けをする」
その言葉に白けた視線を送り、立ち上がって下着をはいて着替えを持ってお風呂に向かう。
折角一人なんだし、まだ決められてないあの事を考えよう。浅羽をやめて桜樹に行くかどうか。
いつの間に風呂を沸かしてくれてたんだろう。
温かい湯船に浸かってはぁ、と息を吐いた。
「桜樹組かぁ···」
行ってもいいとは思うけれど、俺はやっぱり浅羽組が好きだ。どうしたらいいのかわからない、どうするのが正解なんだろう。
撃たれてできた傷口に指を滑らせる。
こんなことばかりしてきた俺が今更浅羽をやめたとして、未だにあまり馴染めていない桜樹に入るとなると···うわー、嫌だな。
湯船から上がってシャワーから出る熱いお湯を頭から勢いよくかけた。
髪をかきあげ後ろに撫でつける。何度もため息が出る。その度に心が重たくなっていく気がした。
「上がったよ」
「おう、何か飲むか?」
「お茶」
ゆっくりソファーに座ると燈人が冷たいお茶を持ってきてくれた。濡れてる髪を肩にかけてたタオルでガシガシ拭かれて「んー」と眉を寄せると「濡らしたまま出てくるな」と怒られてしまう。
「なら一緒に入ったらよかったじゃん。そしたらちゃんと髪拭いてくるよ」
「それも俺が言わねえとちゃんとしねえだろ」
「だって面倒臭い」
お茶を飲んではぁ、と息を吐く。
突然髪を拭いてた手の動きが止まって耳に燈人の細くて長い指が掠れた。
「何?」
「いや、何でもねえ。」
「もう髪の毛いい?ちょっとベランダ出たい」
「ダメだ、まだ乾いてねえ」
「いいじゃん、出させてよ」
「風邪引くだろ」
過保護か!と突っ込みを入れたくなる。
ドライアーを持ってきた燈人。丁寧に髪を乾かしてくれてベランダに出ていいと許可が出たのは結局風呂から上がって15分経った後だった。
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