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第160話

ベランダに出て煙草を吸ってると隣に来た燈人がじっと俺を見てきた。 「何ー?」 「いや···よく見ればお前、綺麗な顔してるなって」 「え、今更?」 「何だよ自覚あんのかよ」 「うん、まだ整ってる方でしょ」 そうしてニコッと笑えば苦笑した燈人がベランダの柵に肘をついて前を向き「はぁ、」と息を吐く。 「ねえ」 「ん?」 「どうしたらいいかわからないんだ」 「···浅羽か、桜樹かで悩んでんのか?」 「うん」 ふぅ、と息を吐く。 ゆらゆらと揺れる紫煙。それを見てると眠たくなってくる。 「何で迷ってんだ」 「だって···浅羽組、好きだし。桜樹組にはまだ慣れてないし···」 「そりゃちょっとやそっとじゃ慣れねえだろ」 ククッと笑う燈人。他人事だと思って!!ってムカついたけれどそりゃそうか。と怒りも鎮まる。 「俺の親父も、俺のとこの幹部も、お前がこっちに来ることは歓迎してるぞ」 「でもさ」 「さっきから“でも”とか“だって”とか、お前はどうしたいんだよ」 だから、それがわかんないんだよ。と煙草を灰皿に押し付け火を消し部屋に戻る。寝室に行ってベッドに寝転がると少しして俺を追ってきた燈人が横にゴロンと転がった。 「真守」 「何」 「迷ってるなら、新しいことしてみろよ。それで無理だって思ったならやめたらいい。それだけの話だ」 「今回はそれをしたら職を失うんだけど、わかってる?」 「お前はもう俺のもんだろ、だからそうなったとしても大丈夫だ。」 「大丈夫の意味がわかんない」 ハハッと笑うと燈人が後ろから抱きついてきてお腹に手を回してくる。出来立ての傷口を指で軽く触ってから優しく抱きしめられた。 「痛むか?」 「大丈夫」 「お前は俺のものだ。今更逃げられると思うなよ」 「思ってないし、逃げる気もないよ」 くるり、体を反転させて燈人の方を向く。 ちゅって触れるだけのキスをすると主導権を握ってたはずなのにいつの間にか押されて激しいキスを受けた。 「はぁ···、···で、どうするんだ」 「っ、ちょ、っと待ってよ···苦しいっ」 息が整うのを待ってほしい、飲み込めなかった唾液が口の端から垂れてる。それを拭おうとする前に燈人に舐め取られた。 「なあ、早く答えろ」 睨むみたいな強い目、真っ直ぐに見られたら敵うはずがない。 「わ、かったよ。燈人の所に行く」 そうして俺は新しい道を開いた。

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