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第165話
夜になって何をする気もなく静かにベッドに入った。
燈人に背中を向けて深く呼吸をすると眠気がやってくる。
目を閉じて後もう少しで眠れる、と思ってると背中側から暖かい体温に包まれた。
「寝たか?」
「ん···何···?」
目も閉じたまま、振り返ることもせずにそう返事をした。
「いや、また明日話す」
「わかった、おやすみ」
「おやすみ」
頬にキスを落とされて抱きしめることはやめないまま深い眠りについた。
***
「起きて起きて起きて!!」
珍しくぐっすり寝てる燈人の上に跨って揺らす。
だけど何だか眉間に皺を寄せて汗をかいてて様子がおかしい。
「燈人?」
「っ、重たい···」
燈人の上から降りて汗ばむ額に手を置く。
異様に熱い体温、俺は慌ててトラに電話していた。
「はーい、おはよう」
「トラ!!熱出てるから診てあげて!」
「今どこにいるの?診に行くけど、その間熱出てるその人に水分取らせておきなさいよ」
「わかってるよ」
「ちょっと今忙しいから場所とか様子を後でまた教えてちょうだい。じゃあね」
ブチっと切られた電話。
水分、と思って冷蔵庫の中を見ると見事に酒とお茶しかない。
買いに行こう、と思って寝巻きにパーカーを羽織って髪を軽く整え財布を持った。
「燈人、俺ちょっとだけ出てくるね」
眠ってる燈人にそう言って家を出る、急がないと、と近くのコンビニまで早く歩いてさっさと物を買───···
「げ···」
何であんなにレジ混んでるの。
わせわせと動く店員さん、なぜか嫌な空気が漂っててよくよく見てみると長い列を作ってるのに関係なしに割込んだ奴がいるみたい。そいつは高校生かな、ギャーギャー騒ぐうるさい男の子。
こっちは急いでんだよ!と足は動いてそいつの胸倉をガシッと掴んだ。
「あ!?」
びっくりしてるそいつに顔を近づける。
「おい、迷惑してんのわかんねえのか。こっちは急いでんだ、さっさと列に並べ」
「ひっ!」
怖い仕事をする時にだけ出す声でそう言うとコクコクと何度も頷いて顔色がだんだん青くなってきてる。
パッと手を離していつも通り笑顔をみせてそいつに「いい子だなー」と言うとヘナヘナと地面に足をつけた。
「そこ、邪魔だから座るならせめて端っこにしなよ」
「···こ、腰抜けた···」
「はぁ?もう、ダサいな!」
そいつを担ぎ上げて店員さんが慌てて持ってきてくれたパイプ椅子を店の端に置きそこに座らせる。
「ごめんなさい」
「いいけどさ、あんまり格好悪いことしない方がいいよ」
「はい」
さてさて、俺は早くこれを買って帰らないと。さっきより短くなった列に並び会計を少し待ってるとすぐに俺の番になる。
「先程はありがとうございました。」
店長さんらしき少し年のいった男の人。
頭を下げてそう言うけど大したことはしてないし「そんなのいいですよ」とヘラヘラ笑った。
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