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第166話
コンビニを出る時にあの男の子にまた謝られて俺はひらひら手を振った。
急げ急げって家に帰ってそう言えばトラに燈人の様子を送らないと。急いでトラにメッセージを送る。
「燈人···?」
寝室に行くと苦しそうに呼吸をする燈人。
薄く目を開けて俺を見てフッと笑った。
「これ、買ってきたから飲んで?」
「···ん」
座ろうとする燈人、慌てて背中を支える。
買ってきたスポーツドリンクをゴクゴクと飲んだ燈人はそのままベッドに倒れ込むように寝転んだ。
「何か食べる?」
「いい···いらない···」
「そっか。じゃあ俺、リビングにいるから何かあったら呼んでね」
「ん···」
短く返事をした燈人は目を閉じて眠りにつく。
こっそり部屋から抜け出してリビングで見たくもないテレビをつけてぼーっとする。こうしてると1人って寂しいなぁって余計に感じる。
同じ家に燈人といるのに、隣にはいない。
そんなことを考えてる時にピンポーンってチャイムがなって玄関に出ると機嫌が良さげなトラがいた。
「お待たせ」
「···何か良いことでもあったの?」
「あら、わかる?わかっちゃう?あたしは今日生まれ変わったのよ!」
「どうでもいいけど燈人のこと早く診てあげて」
頬に手を当ててフフンと鼻をならすトラの背中を早く早くと押して寝室に連れてった。
すぐに燈人を診てくれたトラはちょっと休憩とリビングのソファーに座る。
コーヒーを淹れてソファーの前に置いてあるローテーブルに置くと「ありがとね」とニコニコ笑顔を向けられた。
「本当に、テンション高いね···」
「そうよっ!ついにあたしにも春が来たわ!」
「···彼氏ができたの?」
「ふふっ、秘密」
ニヤニヤニヤニヤ、ずっと笑ってて正直気持ち悪い。
ちょっと距離をとってトラを観察してると目がばっちり合ってこっちに来なさいって手招きされた。
「何?」
「いいこと教えてあげる!」
「···本当にいいことなの?」
「何疑ってるの!」
頬を膨らましたトラ、プンプン、って効果音が付きそうなくらい···様になってるというか、ちょっと気持ち悪いのには変わりはないけど。
「彼氏が熱を出してる時はね、お掃除したりご飯作ってあげたり、普段あんたがしなくて、彼氏がしてくれてることをするのよ!そしたら彼氏もあんたに釘付けメロメロキュンキュンよ!」
「············」
釘付けメロメロキュンキュン···?
「元から燈人は俺に釘付けメロメロキュンキュンだし!···まあやってあげるけど!」
「そうそう!あ、でも風邪をもらうのはダメよ!自分のせいだって彼が自分を責めちゃうかもしれないからね!」
「わかった!」
トラにいろいろ教えられてとりあえず頭に叩き込んだ。
これで大丈夫だね!と親指を立ててトラにつき出せば髪をワシャワシャと撫でられて腹が立ってその手を叩き落とした。
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