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第175話

よし決めた、今晩親父に伝えに行こう。 そう思えたのはその日のお昼頃。 一応俺用にと与えられてる部屋でやっと覚悟を固めることができて、リビングに戻り燈人にそう話すと「わかった」と小さく頷いた。 「スーツ、スーツ」 「お前寝癖ついてる」 「直して」 「じゃあ大人しくしろよ」 バタバタ動きながら直して直してと燈人に甘えてると大人しくしろって軽く頭を叩かれてジッとする。 「叩かなくてもいいじゃんか」 「···悪い」 「ふふっ」 燈人が伸ばしてきた手にスリスリと頬を寄せる。 そしたらなぜか頬を抓られた。 「何」 「いや、ブサイクだな」 「え、俺、割と顔は整ってる方だと思ってるんだけど」 パッと手を離して髪を整えてくれる燈人。何がしたかったんだ?って不思議に思ったけどまあそんなことどうでもいいや、って目の前にある燈人の顔を両手で挟んでキスをする。 「······」 「キスした」 「キスされた」 珍しくケラケラと笑う燈人に俺もつられて笑って、また燈人にキスをした。 「頑張らなきゃね」 「ああ」 額をくっつけてふふっと笑う。 少しの恐怖心と緊張感、だけどそれに勝るほどの安心感。 燈人が側にいるだけで少し強くなれたような気がするんだ。

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